日曜日のお昼といえばTBSが「噂の東京チャンネル」で、「やって到来」が痛々しくて見ていられない。で、この番組のコーナーで「噂の現場」という奴がある。これは理不尽なんじゃないのと思える現場に出て行って双方の言い分を聞こうというものだけれど、概ね民間対行政の衝突だったりする。
今日のこのコーナーは「浅草寺が激怒!雷門の前に巨大ビル」ってタイトルで、えっ!また何か周りに高いものが建つの?という疑問で見た。そうしたら、もうずっと前から話題になっていた雷門前の元の浅草文化観光センターの新築現場のことだった。あそこは昔銀行だった3階建てくらいの小さな古い建物が建っていて、前面に毎時正時になると動く絡繰り時計がある。それを行政が建て直すというのだけれど、その計画が高さ41.25mあって雷門前の角にしては圧迫感があるじゃないかと浅草寺が反対してきた。浅草寺の執事長が出てきて山口良一に訴える。
番組は仲見世の店主連中にもインタビューする。評判堂、人形焼きの木村等々聞いたことのある名前ばかり。しまいにはメトロ通りの蕎麦屋、十和田の女将にして「おかみさん会」会頭だかなんだかの見慣れたあのおばさんまで出てきて、「浅草に高いビルなんて要らないわよねぇ〜!」という。あの界隈はみんな浅草寺のテリトリーの中で商売しているんだから、浅草寺が反対しているのに、賛成するわけがない。そんなこといったら大変だ。
浅草寺が周辺に高い建物が建つのに対して反対するのは今に始まったことではない。会社更生法が適用され(その後どうなったのか知らないけれど、まだ営業中)の国際劇場跡地に建った「浅草ビューホテル」が建設される時にも反対したけれど、建築許可が下りて、今や立派に27階建てのホテルになっている。そして、今工事中の三菱地所と三菱倉庫が建築中なのが37階建ての「浅草タワー」だ。両方とも浅草寺は建築許可取り消しの訴訟を起こしたけれど、ものの見事にまけちまった。
番組では、文化観光センターができると何がいけないのか、とは問うていない。高い建物がなんで必要なのかが理解できないといっている。
雷門の中の風神、雷神に日が当たらなくなるなんてのは嘘で、そもそも日が当たったとしたってお二人とも元々門の屋根の下にいるんだから、あたりにくいのは今始まったこっちゃない。それに雷門の前の並木の通り(昔は都電の盲腸線の終点が雷門だった)はもう既に10階前後のマンションが軒並み建っていて今更どうよ、というくらいの状態になっている。
六区というかつての繁華街が今や寂れに寂れていて、東宝は楽天地のボウリング場も映画館も止めたし、東映や松竹なんてのはとっくに止めちまってみんなパチンコ屋になった。中映あたりはなんにもなっていないけれど、建物それ自体が危なくて、ネットを被って板塀で囲まれていて荒んでいる。
高いといえば、花やしきの遊具も結構高いものがあって、風によっては浅草寺の本堂まで「きゃぁ〜〜!」という声が響いてくる。そういえばあれには浅草寺は文句を言わなかったのだろうか。
つまり、今の台東区の区長の政策が間違っているぞ、というのが今日の番組のスピリットになっているといっても良いのではないか。またぞろこれをテレビが取り上げたこのタイミングはそうとしか考えられない。
というのは、前にも書いたのだけれど、今度の春の統一地方選挙で台東区長も改選になる。自民党が支持して二期区長を務めた吉住弘を今度はその自民党台東支部は支持しないというのだ。じゃ、誰を支持するのかといったら、2007年の参議院議員選挙(丸川珠代が出たあの選挙)で丸川旋風に追われて落選。捲土重来を期し、自民党内の不文律を破って出馬した2010年の参議院議員選挙でもまたまた落選してしまった保坂三蔵が区長に乗り換えて出馬するというのだ。
今日のこの番組は明らかに吉住が建てた計画に反旗を翻しているわけで、自民の支持まで失い、こうしたテレビの反キャンペーンまでされて吉住にとっては絶体絶命ということか。
ま、今度の浅草文化観光センターの完成予想図を見たら、なんとも安定感がなくて、私は好きじゃない。その中に会議室等が作られるというのは地元の利用者としては嬉しい。払底しているからだ。もし、浅草寺がこんなところに会議室なんか要らないというのであれば、彼等が施設を地元にもっと公開したらいい。午後5時になったらまるで役所のように本堂の大扉をガチャンと閉めてしまい、伝法院の庭だって、後生大事にして期間限定でしか見せてくれないし、五重塔なんて入れてもくれない。城じゃないんだから、宗教法人の施設なんだから、人びとにオープンでなければ意味がないと思う。
これは浅草寺だけに限った話ではなくて、宗教法人はすべて、開いていなくては意味がない。黙ってても人がやってくる浅草寺という施設は、宗教としてのあり方を考え直した方が良い。そうでなければ課税するべきだと私は思う。