ほぼ足りてまだ欲 その先

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吉井英勝 その4

 ここで説明されていることは「安全は経済性の前には屈服する」ということである。

衆議院内閣委員会2005年10月19日
日本共産党・吉井英勝
 日本共産党の吉井英勝です。きょう私は、棚橋大臣の担当していらっしゃる中の原子力政策を中心に質問するようにしたいと思います。
 それで、最初に、これは原子力安全委員長さんの方に伺いたいと思います。
 今、原発はもう随分、25年以上だとか30年以上とか、老朽化してくる中で、これまで日本の原発は多重防護で大丈夫としてきたわけですが、そこには、例えば何かトラブったときにはECCSが作動するとか、これはあくまでもECCSがきちっと正常に動くということが前提です。
 例えば、中国電力島根原発1号機で9月21日に、ECCS系の一つで高圧注水ポンプを駆動するタービンの配管付近に貫通孔が、穴があいてしまうとか、それから1999年5月に、私も日本原電の東海第2へ行きましたけれども、ECCSを作動させるときに、低圧炉心注入系であけるべき、いざというときにあけなきゃいけない弁が、あけようと思ったら、当然正常な弁でないとだめなんですが、弁棒が折れてしまっていた問題とか、いざというときに動かないわけですね。
 同じ1999年5月に日本原電第二発電所で、半数の制御棒でガイドローラーが腐食しているというのが見つかりましたけれども、ひび割れによって緊急時に制御棒がうまく動かないということがあり得るという問題が発生しました。
 それから、2002年8月には、ちょうどこれは東電の不正問題の公表があった日でしたが、私はこの日、東電の福島第一原発3号機の調査に行ったんですが、制御棒を駆動する水圧をかける配管が腐食して穴があいて水が漏れるという問題ですね。だから、制御棒を動かそうと思ったら、水圧をかけて、かからなきゃだめなんですが、穴があいて漏れてしまったら圧力がかからないということになってしまうわけです。さっきの東電福島の場合、結局調べてみたら最後は制御棒配管の85%が損傷していたというかなり深刻な問題でしたけれども、何よりも昨年(2004年)8月の美浜原発3号機の配管事故ですね。
 あれは減肉がどんどん進んでいるという問題で、あのとき関電が定期安全レビューを出しておりますが、かつて関電自身が出したものの中にTMIのことを引いていて、二次系といえども大量に漏えいした場合、これはTMI事故にそれでつながったわけですけれども、やはり、安全系が幾つもあって大丈夫と言ってきた、この安全系が正常であっての話で、老朽化によっていろいろな問題が出てくると、原子力の安全というものが本当に脅かされてくるということになってまいります。
 これはほんの一例ですが、30年たった老朽化した原発も多いわけですから、経年劣化という問題は、原発についての考え方はいろいろあったとしても、この問題というのは国民の安全にとって極めて大きな重要な問題だ、これは安全委員会として全力を挙げてこの問題に取り組んでいただかなきゃいけない問題だと私は思いますが、これを最初に伺います。

鈴木篤之・原子力安全委員会委員長代理:          
 お答え申し上げます。
 委員お尋ねの件につきましては、私が思いますに二つ重要なポイントがあろうかと思います。
 一点は、今例をいろいろ挙げてくださいましたが、そういう例にもございますように、機器類ですから、運転しているときにいろいろなことが起きて故障ということはあり得るんだと思っています。そういう場合に、やはりそれをできるだけ大きな事故につながらないようにすることが基本でありまして、そのためにはやはり保全計画、運転段階の原子炉の保全計画を今後とも徹底してやっていくということが非常に重要じゃないかと。
 この点は、運転段階の原子炉の安全規制は規制行政庁が担っているわけですが、規制行政庁においても、この8月に「実用発電用原子炉施設における高経年化対策の充実について」というような報告書を出していまして、その中でそのような新たな取り組みも提言されています。そういうことは非常に重要なことの一つであります。
 もう一つは、いろいろな事象、今委員がおっしゃったようなことが起きたときに、それが果たして大きな事故につながる可能性が実際はどのくらいなのかということを、これはできるだけ定量的に把握して、そしてそのリスクの大きさに応じて、保全計画における重点を置くべきところとそうでもないところをきちんと仕分けしていく。
 それを我々はリスク情報を活用した規制と呼んでおりますが、これは安全委員会もそれをぜひやるべしというふうにここ数年言い続けているんですが、でもこれは諸外国で、特にアメリカがそういうことで非常に成果を上げていますので、そういうアメリカ等の先例を勉強しつつ、日本においてもこれをできるだけ進めていくべきではないか、このように思います。
 ありがとうございました。

日本共産党・吉井英勝
 何か保全計画が立ったら大丈夫みたいな発想になったらこれはまた全然違う話で、それは当然の話だと思っているんです。その当然のことを前提とした上なんですね。
 可能性について考えるのもこれまた当然なんですが、現実にそれが両方ともきちんとなされていない中で関電では5人の方が犠牲になられた。あれも単なる火力発電所と同様というふうに考えてはとんでもない話で、二次系といえどもTMIの問題を持っているんだということは、関電自身がかつて定期安全レビューで書いていたことですから。
 だからこそ私は、安全というものは、今後こうすればいいということじゃなくて、その話は全部当然なんですが、しかし現実はそうじゃないから、やり切らせるということだけじゃなしに、本当に一つ一つの安全チェックが、最初の書類審査だけじゃなしに、きちんと安全委員会としても取り組んでいく方向をやはり考えていかれないことには、国民の安全というものを守っていくことにはつながらないというふうに申し上げておきたいと思います。
 次に保安院の方に、ことし8月16日に発生した宮城県沖の地震のときに、東北電力東京電力などでどんなトラブルがあったのか、簡潔にお答えください。

資源エネルギー庁原子力安全・保安院長・広瀬研吉
 8月16日に発生した宮城県沖の地震におきまして、東北電力女川原子力発電所地震の揺れを感知して3基とも自動停止しました。その後、東北電力において発電所各設備を点検した結果、安全上問題となる損傷は認められないとの報告を受けております。この自動停止による環境への放射能の影響はありませんでした。
 また、現地に常駐しております国の原子力検査官も、プラントのデータに異常がないことを確認するとともに、現場の巡視点検により建屋等に問題がないことを確認しております。
 なお、同発電所内の環境放射能測定センターにおいて希硫酸の漏えい等が発生しましたが、適切に処理された旨、事業者から報告を受けております。
 なお、東京電力の福島第二発電所4号機、福島第一発電所2号機、6号機におきまして、原子炉建屋の使用済み燃料のプールの水面が揺れまして、水面近くに設置してある換気口に流入をし、空調ダクトの継ぎ目から水が滴下したものという報告を受けております。これも環境への影響はございません。

日本共産党・吉井英勝
 私は、そこのとらえ方が物すごく大事だと思うんです。関電の美浜にしても、その1カ月前に関電でやはり配管減肉が見つかっておっても、割と軽く見ておったんですね。どの問題も、大きな事故が起こる前に予兆となるものはいろいろな形で出てくるんです。
 今、東電の方では、福島では放射能を含む水漏れの話、それから女川の方では希硫酸が漏れたという話です。それ自体はあなたがおっしゃったように本体に直接関係があるように見えないけれども、しかし、最初、地震の日の、これは明らかにされたところでは、S1 250に対して251ガルを観測するほどあったというぐらいだったんですが、しかしその後、解析をされたりすると、S2の方は673ガルに対して実際には888ガルというのが9月の分科会でも明らかになってくるなど、これはなかなか深刻な問題なんですね。
 問題は、見かけは確かに大丈夫だ、しかし実は、その見かけとは別に、構造物の破損の状況がどれぐらい進んでいるのかというのは見かけだけじゃわからない部分があるんですね。それをどうチェックするかということが必要なわけであります。
 例えば、外見でわからないものは、大型試験施設装置などで実証試験を行って、可能な限り解明していくということが大事ですね。30年ほど経た、実際の老朽化した原発の重要な機器類や配管類等、かなり大きなものを実験しようと思ったら、これは多度津の起震台ぐらいしかありません。
 そういうところで、見かけ上の安全とは、大丈夫というのとは別に、きちんと当初設計したものが30年たってどうなのかとか、これはやはりやっていかないことには、解明しないことには、安全というのは簡単に言える話じゃないので、私は、この点では原発の老朽化というものと巨大地震と重なったときにどうなのか、これは改めてきちんとした解明を安全委員会としても取り組んでいく、このお考えを持っていただくことが大事じゃないかと思うんです。理論解析だけじゃなしに実証ですね。
 その一言だけ、ちょっと安全委員長代理に伺っておきます。

鈴木篤之・原子力安全委員会委員長代理: 
 お答えを申し上げます。
 確かに、できるだけ実際の機器に近いものを試験してみるということは大事なことだと思うんです。しかしながら、やはり資金といいますか資源にも限りがあって、我々としては、与えられた資源の中で最も適切な実証計画といいますか試験をやっていくというのがやはり現実的なのかなと思っております。
 しかし、試験できないものについても確認が必要ですから、そういうものについてはできるだけ解析等を駆使して、安全をいろいろな角度から確認する、こういうことではないかと思っております。

日本共産党・吉井英勝
 資源に限りがあるといっても、現に多度津に起震台があるわけなんです。それを使うことによって、実際に理論解析と、そしてそれが実証されるかどうか実験によって確認するということは、安全にとって物すごく大事なことですね。私は、それをやらないことには、日本の原子力政策とか原子力の安全というものは、とても国民の皆さんから信頼されるものにはなっていかないと思うんですよ。私は、そこのところは原子力安全委員会の考え方というものをやはりきちんと改めてもらわないといかぬと思うんです。
 保安院にこの点で伺っておきますが、S2地震というのは実際に起きたら無事では済まない大地震なんですね。これに耐えられる原発としてS2をクリアするようにつくってきたわけですね。これを超えたわけですよね、今度は。見かけ上は大丈夫なように見えても、機器の損傷というのは深いところで進んでいるという可能性も高いわけです。
 だから、この点ではS2までは耐えられるとしたんですが、これを超えたら耐えられないわけですから、保安院としてはどのような検査を実際に保安院としてやってこられたのか。これは保安院の方に伺っておきます。

資源エネルギー庁原子力安全・保安院長・広瀬研吉
 先ほどお答え申し上げましたように、今回の地震東北電力において発電所各設備を点検した結果、安全上問題となる損傷は認められておりません。
 しかし一方、先生御指摘のように、地震時に観測されたデータを分析した結果、女川原子力発電所における揺れは、原子力発電所の耐震設計の際に想定する最大基準地震動を一部の周期で超えていることが判明をいたしました。これを受けまして原子力安全・保安院は、東北電力に対してデータのより詳細な分析、評価を行うよう指示をしたところでございます。
 原子力安全・保安院としましては、今後、東北電力の分析、評価の結果を踏まえて詳細な検討を行うことにより、原子力発電所の耐震安全性確保に万全を期していきたいと考えております。

日本共産党・吉井英勝
 要するに、保安院としては、現場へ行って目で眺められたかもしれないけれども、検査していないわけですよ。実際に老朽化してきた原発が設計どおりちゃんと巨大地震に耐えられるかどうかというものは、それは、多度津の試験装置がせっかくあるんですから、生かすのが大事だと思うんですね。
 ところが、経済産業省の方は、この多度津については、ここは原子力発電機構、一応国の委託という形でやっておりますが、委託を打ち切るということで、原発の重要な機器類の耐震試験が終わって役目を終えたということで、実は、30年たったまさにこれからちょうどいい素材があるわけですよ。起震台にかけて、老朽化した原発で巨大地震に耐えられるかどうかという実験をする素材が生まれているときに、これをつぶしてしまおうというわけですね。何でつぶすんだと言ったら、文部省のE-ディフェンスができたからだとか、あるいは、維持費が年10億かかるのは高過ぎるとか、電力の方もそれを負担するのは嫌だとか、経産省が委託を打ち切ったからだということなんです。
 私、本当にまじめに原発の安全ということを考えるならば、E-ディフェンスで置きかえることのできない装置なんですから、もともと目的が違うわけだから、原発の機器類の巨大地震に対するチェックのためにつくっているものですから、これは捨ててしまうんじゃなくて、まさにこういうものを使って、これから老朽化してくる原発について、その重要機器類を、巨大なものを持っていって、巨大といっても分解しないと全部は調べられないんですけれども、やはりこれをきちっと調べるという姿勢を、私はこれは国の方でとるべきだと思うんですが、これは一言で結構ですから、ちょっと時間があるから、簡単に答えてください。

資源エネルギー庁原子力安全・保安院長・広瀬研吉
 多度津工学試験所の大型高性能振動台を用いた振動試験につきましては、安全上重要な大型設備のデータの取得を終えましたので、平成16年度で終了したところです。
 今後は、必ずしも実物大の試験体を用いずとも、他の研究機関の試験設備による小型のモデルを使った振動試験とコンピューター解析によって、地震時の挙動を把握することが可能であると考えております。この実試験と解析の効果的、効率的な組み合わせにより、引き続き原子力発電所の耐震安全性の確保に万全を期してまいります。

日本共産党・吉井英勝
 今、小型モデルというのを聞いて、委員長、びっくりしはったと思う。
 大型の原発で30年たって老朽化してきたものを実際の起振動、地震を起こす装置に載せて、構造上あるいは機器の安全上どうなのかということをチェックしなきゃいけないときに、何か分割して新しいもののモデルでもって事足れりと。とんでもない発想だと思うんです。
 そこで、最後に大臣、私、なぜこういうことを聞いてもらったかというと、今度、原子力政策大綱を出したわけですけれども、名前がかつての原子力長計が政策大綱と変わっているだけで、結局、プルトニウムを循環して使うという原発推進の政策は変わらないわけですよ。
 しかし、まさに問われているのは、今まで以上に、プルトニウムの危険ということを考えても、安全対策をもっと真剣に考えなきゃいけないときに、それにかかわるものはどんどん切って捨ててしまう、そんなやり方でいいのかということが問われているときなんです。
 これは、原子力安全委員長として、政策大綱は私はネーミングを変えただけのものだと思うんですけれども、今原子力について考えなきゃいけないのは、考え方はいろいろあっても、この原発の老朽化してくる中、巨大地震が進む中で、どう国民の安全を守るかということをもっと考えたことを大臣として打ち出してもらう必要があると思うんです。最後に大臣に伺って、質問を終わりにしたいと思います。

棚橋泰文・科学技術政策担当:   
 お答えをいたします。
 吉井先生も、特に原子力の分野は大変お詳しくて、お世辞抜きで専門家でいらっしゃいますので、今般の原子力政策大綱についても重々御存じの上での御質問をいただきました。
 これは、先生御承知のように、原子力に関する私どものスタンスは、まず安全性が大前提である、この基本原則を絶対に外してはいけない。このスタンスは、先生と思いが共通しているんではないかと思います。
 それで、今般の原子力政策大綱ですが、原子力委員会が、ある意味では、ちょっと言葉が言い過ぎかもしれませんが、独立的あるいは第三者的な立場になって、そして今までのような科学技術庁長官がという形ではなくて、今のような形になって原子力政策大綱を大変熱心な議論の中で決定していただきました。
 今般の原子力政策大綱の中には、国あるいは電気事業者等に一層の安全確保あるいは国民の信頼回復に向けた努力、これが求められているということを現状認識として深く認識した上で、例えば、最新の知見を踏まえた科学的かつ合理的規制の実施、あるいは今お話にございました高経年化対策の充実を含む安全の確保の一層の改良、改善を重視する方針、こういったものを提示しております。
 また、同じように、今先生の問題意識の中でございました、国内外において大きな地震が相次いでおりましたので、そういう観点からも、原子力施設の地震リスクについての国民の関心が高まっていることに留意すべきということも明記させていただきまして、こういった安全の観点からも、原子力政策大綱として中身を充実していただいているんではないかと思っております。
 私どもとしては、これを基本方針として尊重し、と同時に、何よりも安全の確保が大前提である、そしてその大前提をきちんとした上で原子力の研究、開発、利用、これをやっていくというスタンスを大事にしながら頑張ってまいりたいと思います。

日本共産党・吉井英勝
 時間が参りましたので終わりますけれども、大臣、よくお聞きいただいたように、安全といいながら装置切り捨てというのは逆ですからね。そういうところを含めてきちっとやってもらいたい。終わります。