ほぼ足りてまだ欲 その先

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達筆

 墨痕鮮やかに書かれた宛名の封筒を受け取るなんて近頃は滅多になくて、あんまり上手いと筆耕やさんに依頼して書かれたものを印刷でもしたのかと思うくらい。ところがその封筒をひっくり返してみると親の出身地の住所。しかし、その名前には見覚えがない。ファースト・ネームを繰り返して口でいって見ると、アッ、ひょっとすると私がまだ小学校に入るか入らないかの頃にうちに来ていたオヤジの姪、つまり私の従姉ということになる、あの人か。
 開けてみると「私も来年早々には喜寿になる」としてある。私よりひとまわり上だということか。計算してみるとそのはずだ。もう何十年も逢っていない。うちの親の墓にはどうやっていくんだと書いてある。来るのか。