ほぼ足りてまだ欲 その先

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原爆

 先日の保阪正康レクチャーで面白い本をたくさん紹介して戴いたので、ちょっと捜してみた。なにしろあの人の背後には相当なる蔵書があるようで、びっくりするような本を持ち出してこられるので刺激されて勉強になる。
 一番びっくりしたのは「原子力と私-仁科芳雄遺稿集」で、なんと1951年学風書院の出版物だ。実際にどれほど戦争中にあったことが書かれているのかはわからないけれど、彼は1983年に朝日ソノラマから「原子爆弾完成を急げ―衝撃の戦時秘話」という本を出していて、このあたりは踏み込んでいたようで、今年の2月には私の嫌いな二大出版社の一つである新潮社から「原爆製造計画と原子力発電 悪魔と天使の20世紀」という著書を刊行する予定にしているということが彼のホームページに出ている。これまでの彼の著作の大半は入手しているつもりだったけれど、講談社から文庫になっていた「あの戦争から何を学ぶのか」は私は持っていない。
 興味深かった三省堂選書62「国際シンポジウム原爆投下と科学者」は1978年8月に東京で開催された「核軍拡の起源と現状ー学際的討論」なるシンポジウムの記録なんだそうで1982年に書物になっているのだけれど、冒頭のM.I.T.の教授でマンハッタン計画に携わったBernard T. Feldをはじめ原水爆禁止世界大会に参加した多くの研究者達の原爆開発に関わる事実が語られているという点で興味をそそる。たかだか200頁程度の書物ではあるけれど、これは貴重だと思われる。



 もう一冊(というか、上下二巻)は1994年に福武書店から出版され翌年同書店から文庫化された「なぜナチスは原爆製造に失敗したか―連合国が最も恐れた男・天才ハイゼンベルクの闘い」である。天才といわれ、多くの周囲の研究者がアメリカへの亡命を誘ったにもかかわらずドイツに残り、挙げ句に原爆製造に関した大きな誤りを犯していたといわれるハイゼンベルクの真実はなんだったのかを1000頁近くを費やした力作だということのようだ。
 この二つの書籍を私は地元の図書館で見付けることができた。わが図書館も意外に利用価値があることを知ったといっても良いかも知れない。

 ところで保阪正康歌人でノンフィクション作家だった 辺見じゅん角川源義・鈴木冨美子の長女。つまり春樹・歴彦の姉。)の対談本が、(くだらない週刊誌を出しているもう一方の雄たる)文藝春秋社から文春新書となって刊行されるのだそうだ。「お歌でよみがえる昭和天皇の時代」でこれまた今年の2月の予定だそうだ。とにかく保阪は多作。この刊行予定も保阪のサイトで知ったのだけれど、なんと保阪は癌を患っているという。今まで知らなかったわたしは驚いた。
 昨年9月に亡くなった辺見じゅんとはこちらでも対談をしている。(大きな声ではいえないが、私は辺見じゅんを男だとばかり思っていた。)