改めて考えてみると、えらいことになりそうだから、それほど踏み込んで考える気もないのだけれど、うちの親は子どものことに関してどう思っていたんだろうかと時として気にならないでもない。
オヤジは多分ようやく生まれてきた男の子どもが自分が思っていたのとはえらくかけ離れていて、すっかりガックリ来てしまっていたんだろう。なにしろ彼は理系の技術屋だったし、私は数学大ッ嫌い、口先八丁で世間を乗りきろうと思っていたわけだから、話が合うわけもない。彼は明治の終わりの生まれの男固有の態度をとっていた積もりのようだけれど、実際は結構不器用でいながらおしゃべりな男だったような気がする。自分を乗り越えるような子どもになって欲しかったのだろうけれど、そんなのは滅多にあるこっちゃない。
おふくろはどうかといったら、多分なんにも思っちゃいなかったのだろうけれど、結構楽しんでいたんじゃないだろうか。晩年は認知症になっちゃったから訳分からんことになっていたんだろうけれど、偶に意識がハッキリしたときに歌のことになるとかなり楽しそうに聞いていたし、自分でも歌っていた。彼女の歌の趣味を私とすぐ上の2歳年上の姉がそれを継いでいて、周りの人の迷惑を顧みず、平気で歌う。
姉はエルビスのファンとなって、偶にお金を払って10数人の人の前で歌うし、私も時として人の前で歌う。それでもおふくろには一度も聞かせたことがない。
明日は銀座のライブハウスで昔の曲を10曲ばかり歌うのだけれど、おふくろが聞いたらなんといったか、想像すると面白い。