かつては上野駅といったら東北人の東京における原点だったそうだ。今でも上野駅には井沢八郎が唄った「あぁ、上野駅」の歌碑が建っている(はずだ)。何しろ東北からやってくる人は皆上野で汽車から降り立った。
かつて先輩に連れられて呑みにいった新宿の場末のスナックにやっぱりそうして東北からでてきたおばさんがいた。このおばさんが酔っぱらうと必ずこの歌を歌った。彼女は「うえのえき」とはいわなかった。「ういのえき」といっている様に聞こえた。それがあのメロディーと相まって実に哀愁を帯びていた。
だからかどうか知らないけれど、上野駅から北東の方向、つまり台東区、墨田区、荒川区、足立区あたりでは今でも生まれ故郷のなまりを残したお爺さん、お婆さんに遭遇する。もう今では随分少なくなった様な気がするけれど、かつてはTBSラジオの毒蝮三太夫の中継放送を聞いていると、そんななまりを残した威勢のいいじいさん、ばあさんが大きな声を張り上げていた。特養に行ったらいくらでも、いっていることを聞き取るのが難しい爺さん、婆さんに遭遇したものだ。
こんなことももうとっくに昔の話になってきちゃったのかと感慨深い。