ほぼ足りてまだ欲 その先

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夜来香

 もう今の人にはわからないかも知れないけれど、こう書いて「いえらいしゃん」と読むわけだけれど、これって一体全体、なんのことなのか知らない。李香蘭(りこうらん)と名乗っていた山口淑子が唄っていた歌のタイトルだというのは知っている。今でもそらんじることができる。歌詞から見るとどうやら花の名前のようだ。
 そういえば山口淑子はかつてイサム・ノグチと鎌倉の魯山人の処に転がり込んで暮らしていたことがあったとドウス昌代の本に書いてあって、驚いたことがある。
 自民党が担ぎ出して18年間も参議院議員をやっていたはずだ。一体何をやっていたのかなんも聞いていないけれど、日本の政界ってのはずっと前からいい加減で、こんな事で良かったんだから大笑いだ。今だって、何をやってんのかわからない芸能界やスポーツ界出身の国会議員が何人もいるんだから、だぁ〜れも真剣にやっていないんだな。それでも国民が支持するんだからしょうがない。お似合いだってことだ。
 話がどこかへ飛んで行っちゃうぞ。
 二人で随分久しぶりに清水の街へ行ったのだけれど、これは全くのセンチメンタル・ジャーニィーで、ひとつは昔暮らしていた現場を見ること、好きで行っていたお店がどうなっているのかを確認する事ってんだから、随分後ろ向きの旅行なんである。
 で、その清水に友達とよく食べに行った中華そば屋があって、その名前が「夜来香」というのだ。あそこのおじさんがどこで修業した人だったのか知らないけれど、この界隈ではここの焼きそばだけが本格的な焼きそばで、実に旨いといって、何かあれば週末に街に出て行ってはここの焼きそばを食べていた。お店が移ったのは知っていたし、それ以降2回ほど来た記憶があるのだけれど、それがいつのことだったのか、殆ど思い出せない。少なくともこの15年以内のことだ。
 行ってみると水曜日で商店街が休んでいるのに、その横丁にあるお店は開いていて、灯りがついていた。喜んで入り、ラーメンといくつか種類のある焼きそばの中から、多分これだと思うものを注文する。当時夫婦でやっていたおじさんもおばさんももう姿が見えない。と思っていたらやせこけて調理服を着たおじさんの写真がお店に飾ってある。あぁ、もう他界されたんだなと察しがつく。
 出された焼きそばはまさにあの焼きそばで、一口喰ったら直ぐさまあの頃のことが浮かんでくる。あの頃独身寮で暮らしていた連中はみんなどうしているのだろう。えらくなったんだろうなぁ。みんな勉強のできる優秀な連中だった。
 つれあいが頼んだラーメンも一口食べさせて貰ったら、懐かしい、優しい味がそのままだった。帰り際にレジの女性におじさんは亡くなったの?と聞いたら最後は癌で痩せてしまったのだそうだ。おばさんはお元気だけれど、足が良くないという。「味が変わってなくて美味しかった」といったら、いった自分が落涙しそうだった。