ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

 昨日偶々本屋で保阪の本の隣に置いてあったので手にした、この本。非常に興味深い内容で、感心した。その上、この中に引用されているこれまで知らなかった本を発見できたことは大変に意義深い。
 特に驚いたのが、アイヴァ・戸栗が「ゼロ・アワー」に起用された理由である。これまで様々な書籍や資料を見てくると、彼女は必ずしも良い声でなかったというよりも、悪声だったと表現されている。中には蛙が潰されたような声だったとまでいう人もいる。それなのに、なぜこのプロパガンダ放送のアナウンサーの一人として採用されたのか。
 この番組のスクリプトを書いていたライターの一人は例のチャールズ・カズンズだけれど、彼はそのナレーションの中にネイティブな日本人ではわからないようなニュアンスで他に伝えたいと思うことを放り込んでいこうと思った。しかし、日系二世とはいえ、日本人であるそれまでに担当していたアナウンサーでは、それに気がつかれてしまう恐れがある。しかし、おばさんの病気見舞いで来日してそのまま取り残される羽目となり、官憲からしつこく日本国籍を取得しろといわれても頑固に米国籍を手放さずにいたアイヴァ・戸栗は、日本よりも自らの母国を大事にしてきたような女性だから、必ずや協力的となるだろうという読みだったというのである。これは腑に落ちるではないか。
ブラック・プロパガンダ―謀略のラジオ

ブラック・プロパガンダ―謀略のラジオ

 それがこの本で、10年以上前に書かれたものだというのに、私が気がついていなかったことは些か遺憾。早稲田大学の先生の著作のようだ。速やかにAmazon手配をしたのだけれど、やっぱり懐に響く。到着が待たれる。