ほぼ足りてまだ欲 その先

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「マイクの広場 A級戦犯」

 どなたかのツイートで知った。文化放送(東京)が1955年に録音し、1956年4月に放送した番組で、この番組の音源が残っていたのだという。どういう形で残っていたのかはわからないけれど、この30分間の番組は1955年6-9月に釈放された4人の元A級戦犯で、終身刑に処せられた荒木貞夫橋本欣五郎氏(元陸軍大佐)、賀屋興宣氏(開戦時の大蔵大臣)、鈴木貞一氏(元陸軍中将)へのインタビューである。
 で、これを報じたのは第18回新聞労連ジャーナリズム大賞を受賞した高知新聞の一連の報道のひとつで、2013年8月13日朝刊に掲載された記事である。(記事はこちら→http://www.kochinews.co.jp/18janataisho/130813taisho.html)。
 「もはや戦後ではない」なんぞという言葉が使われた時代で、今から見ると充分に戦後そのものだけれど、そんな台詞で占領下にあれほど神妙に民主主義を絶賛していた風潮から一転。どんどん復古を希求する旧官僚主義既得権益懐かしいぞ主義がその勢力をCIAを後ろ盾に広げていた時代で、この記事を見ると、当時のディレクターの使命感がひしひしと伝えられている。今、正にこの時代にジャーナリズムが真摯にその使命を振り返る手立てとするべき価値観である。
 それにしても、この4人の神をも畏れぬ発言には、あきれかえって歯ぎしりをして自分の歯が欠けてしまうような思いがする。(どういう思いかは微妙だろうか)。
 今の自民党政権とお追従もの公明党、およびその周辺にいる別働隊政党の諸兄は彼らの愚かさに輪をかけた愚かさで、噴飯物だけれど、それを支えているのはいったい誰なのかという話でもある。

  • 橋本欣五郎氏(陸軍大佐、大政翼賛会常任総務)】「戦争をやるべく大いに宣伝をしたということは事実ですよ。そうして、これが負けたということは誠に、僕は国民に相済まんと思っておるですよ。そりゃ、はっきりしとりますよ。けれども、外国に向かって相済まないとは、一つも思っておらない」
  • 賀屋興宣(おきのり)氏(開戦時の大蔵大臣)】「敗戦は誰の責任か? われわれの責任じゃない。それをだな、われわれに(対し)けしからんと言って憤慨するのは少し筋違いじゃないか。お前、自分の責任が大いにその原因してるぞ」「あらゆる責任は、いわゆる軍閥が主です。財閥や官僚というものは、戦争を起こすことについては、非常に力が薄いです。むしろ反対の者が相当にあった。主たるところは軍人の一部です」
  • 【鈴木貞一氏(陸軍中将、戦時中は内閣顧問)】「戦争責任を考える上については、やっぱり国民のね、政治的な、その何と言うか、責任と言うかね。もし、国民が戦争を本当に欲しないというそれが、政治の上に強く反映しておれば、そうできないわけなんだ。だから、僕は政治家の力が足りないと。足りなかったと。もしも、戦争が誤りであるとすればだよ、その誤りを直すだけの政治の力が足りなかったと」「政治の力が足りないということは、何かと言うと、国民の政治力が、すなわち、政治家は一人で立っているんじゃないわけだからね。国民の基盤の上に立っているんだから。今日の言葉で言うならば、世論というものがだね、本当に、はっきりしていないことから起こっていると思うんだな」「当時の堂々たる政治家が、極端に言うなら、軍に頭を下げるようなことをやっておった。そういうことでは、軍人を責めることが、むしろ僕は無理だと思うんだ」
  • 荒木貞夫氏(陸軍大将)】「(米軍が戦争に)勝ったと僕は言わせないです。まだやって勝つか、負けるか、分からんですよ。あの時に(米軍が日本本土に)上陸してごらんなさい…彼らは(日本上陸作戦の)計画を発表しているもんね。九州、とにかくやったならば、血は流したかもしれんけど、惨たんたる光景を、敵軍が私は受けたと思いますね。そういうことでもって、終戦になったんでしょう」「だから、敗戦とは言ってないよ。終戦と言っとる。それを文士やら何やらがやせ我慢をして終戦なんと言わんで、『敗戦じゃないか』『負けたんじゃないか』と言っとる。そりゃ戦を知らない者の言ですよ。簡単な言葉で言やあ、負けたと思うときに初めて負ける。負けたと思わなけりゃ、負けるもんじゃないということを歴戦の士は教えているものね」「(対米開戦をしなければ)ジリ貧と言った東条(英機)君の言葉も、必ずしも一人を責めることはできんじゃないかと。どうせしなびてしまうようにさせられるなら、目の黒いうちにイチかバチか(戦争を)しようというのは、普通の人の頭じゃないかと、こう、私は言いたいのです」「戦争中にあったことは、いつまでもグズグズ言うのは、これは間違いだ」「逆コース(1950年代前半の日本の再軍備などを指す)なら逆コースでよろしい、と。いま端的に言うなら、憲法問題。(改正反対などと)グズグズ何か言うなら(明治政府の)五箇条のご誓文でいいじゃないかと」