ほぼ足りてまだ欲 その先

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NHKBS特集「原爆投下を阻止せよ〜“ウォール街”エリートたちの暗躍〜」

 日本への原爆投下を巡るトルーマン大統領を挟んでJoseph Clark GrewとJames F. Byrnesの駆け引きをつまびらかにして、なぜ米国が日本へ原子爆弾を投下したのかを明らかにする。多分この辺のことはこれまでにも何回か著作によって著されてきたものであるだろうが、私は初めて知り、「戦争を早期に終結に導きその後の双方の被災者の数を低減するために有効な手段であった」とされている原子爆弾必然論を否定するものだと知った。
 Grewは日本近現代史をほじくると必ずぶつかる人で、1932年に駐日米国大使として赴任し、開戦後、日米交換船にて米国に戻った知日家で知られる人である。しかし、彼のバックグラウンドはWall Streetを拠点とするマネジメント層であり、なかんずくその中心でもあったJ.P. Morganであった。だから、彼等が常に考えていたのは米国産業界の極東の工場たるべき日本であり、それまで投資していた日本の産業をぶち壊すことなく、終戦に持ちこむことだった。そのためにも天皇制を護持することによって、日本を降伏せしめることに注力した。
 一方、南部出身のByrnesはルーズベルトからマンハッタン計画を任され、年間予算の20%もの予算を投じてロスアラモスに建設した原爆開発プロジェクトを完成させることに注力していた。彼にとっては北部ニューヨーク、ウォールストリートのグループが早期に戦争を終結させてしまったら、注力してきた原爆開発は単なる理論に過ぎなくなってしまう。
 ルーズベルトが急死して、突然大統領になったトルーマンは突然原爆開発のことを知らされる。ポツダム会議に向かうトルーマン随行したのは国務長官となったByenesで、ヨーロッパで力を誇示するソビエト連邦スターリンを黙らせるには原爆開発しかないと信じていた。その会議の席上で、原爆実験が成功したことを知らされ、トルーマンはByenesの提案を受け入れる。その結果広島に最初の原子爆弾が落とされたのだ。
 つまり、米国で語られている「早期に終戦を迎えるために」原子爆弾が投下されたのではなくて、原爆を投下して東側にその脅威を見せつけるために、対日戦の終結を遅らせた、というのが事実のようだ。
 いずれにしても、ブッシュのイラク侵攻もそうだけれど、戦争はすべからく、誰かが儲けよう、あるいは面子を立てようとして一般国民を犠牲にする行為であるようだ。