同じ階の同じ年頃のご夫妻が引っ越しをしている。この階に8世帯が入っているんだけれど、この集合住宅ができた16年前から変わらずに済んでいるのはこれで三軒だけになる。中には顔も記憶に残っていないお宅もある。
ご商売をされていたご夫妻だったのだけれど、半年ほど前にバッタリお逢いしたときに、実は売りに出している、と仰っていた。もう商売もそろそろ切り上げ時だし、どこかもっと田舎に越したいんだといっておられた。地元のご出身だと思っていたけれど、ひょっとするとどこか地方のご出身だったのかも知れない。歳がいってから交通の不便なところに引っ越すのはなかなかやっかいだろうと思うのだけれど、娘さん達が独立してからお二人だけで暮らしておられたから、器が余るようになったということはあるだろう。
お一人で暮らしておられた高齢の女性は茨城の出身地に帰るといって越して行かれた。早く帰らないと友達が逝ってしまうからと。隣におられた医者のご夫妻は理事長をやられてから、このコミュニティーがいやになったようだったが、その気持ちがわからないでもない。管理組合の常連若手が歯に衣着せない発言をする人たちだからだろう。私も随分忌憚のないご意見をぶつけられて驚いた記憶がある。
