もう民族をステレオ・タイプで語ってしまうってのは、昔はよくございました。なにしろ各地の情報がこんなにバンバン入ってくる世の中ではなかったので、ちょっと行ってきた人が言うことを鵜呑みにして、それでその民族や国家がわかったような気になっていましたからね。ギリシア人はこすっからいとか、インド人も言い訳が上手くてこすっからいとか、レバノン人はすぐに「ノー・プロブレム」というけれど、プロブレムだらけだとかね。そんなの自分の数少ない経験に過ぎないんだけれどね。でも、それで済んでいたんだね。今はそうはいかないよ。何しろこの国に、こんなに多くの国から移動してきているわけだから、あっちにもこっちにも、これまで逢ったこともない国の人が暮らしている。
しかし、そんな頃に染みついた、そういう印象ってのがなかなか払拭できない。そういう思いっきり自分を主張しないと生きていけなかった国からやってきた人たちはそういうリアクションになれているわけで、周囲がそういう人たちが多いんだから、よい子にしていたらえらいことになっちゃったかも知れないんだよね。そこへいくと日本という国は戦争中も含めて、価値観のことなる人たちと接触する機会はほとんどなかった。あっても今度は自分たちの価値観を押しつけてきたからね。向こうの価値観を斟酌しなかった。随分傲慢だったわけだ。
それにしても一体全体、今の日本にはいくつの国からやってきているんだろう。
