ほぼ足りてまだ欲 その先

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テーラー

 もはや街中でもなかなか見ることがなくなった商売のひとつがいわゆる「テーラー」という商売。
1960年代なかばくらいまでは各町内に必ず一軒くらいは自宅兼用のテーラーがあった。
なにしろ今のように既製服のチェーン店が各種サイズを取り揃えて、「何から何まで揃えて、29,980円!」なんてのはあり得なかった。
うちのオヤジは工場務めだったけれど、行き帰りは必ず背広だった。スーツなんて格好良いものではない、背広だった。
なにしろ当時としては大きい方で、身長は175cmくらいあって、体重が20貫といっていたから、75kgだったんだろうか。
会社から帰ってきてオヤジが脱いだ上着を受け取ると、ずっしり重かった。
その背広を作ってもらっていたのは横浜の野毛にあった「テーラー坪井」という店だった。
その当時の背広をテーラーに注文すると採寸があって、しばらく経ってから仮縫いがあって、念入りな時にはもう一度位本縫いの前に試着して修正したんじゃないかという気がする。野毛のお店にいって仮縫いだったり、なかなか予定が組めない時には、テーラーの旦那が我が家に来て仮縫いをしたりだった。
 多分野毛といったら当時は動物園だったから、その行き帰りなんかに仮縫いをしたのかもしれないけれど、結構面倒だったから、背広を作るのも高かったんだろうという想像はできる。その割には夏には麻の背広だったり、結構優雅な格好をしていたものだと思う。今だったらとても麻の上着なんて着られない。すぐにしわくちゃになってしまう。そんな洒落た格好をするような境遇でもない。
 先日友達とSNSで会話していて、そういえばもう革靴を履くことがめったに無いことに気がついた。というか、もう三年以上、革靴を履いていないし、もう多分一足しかない。あとは全部スニーカーか、トレッキング・シューズのたぐいである。