1989年生まれの太田奈名子は戦後の「街頭録音」で有楽町のお姐さんの発言を隠し録りしたNHKの放送は「プライバシーを侵害」したと書いているけれど、当時の日本の放送界においてはその概念は全くといって良いほど確立していなかった。今でこそ、何かにつけてプライバシーが取り沙汰されるようになったけれど、それはついこの前のことじゃないかと、最初のところを読みながらそう思ったんだね。
「真相はかうだ」なんかの街の声は全くのフリーだったわけではなくて、駐留軍、要するにGHQの意に沿った声だけを取り上げた結果であって、粟屋憲太郎や竹中昭子がいうような「マイクの開放」と捉えるのはいかがなものかというあたりから始まるところを見ると、なんかこの喧嘩の売り方が期待させるような気がしないでもない。