訃報というには遅すぎるけれど、今まで知らなかった。日本近現代史、中でも東京裁判、極東軍事裁判研究者で立教大学名誉教授であった粟屋憲太郎先生が昨年9月に亡くなっていたことを知る。75歳である。老衰という年齢ではない。病気だったのだろうか。最後に粟屋先生をお見かけしたのは2008年11月のことだっただろうか。その年、私は粟屋先生の授業を聴講した。先生の著作は全て網羅していたつもりだったので、そこに書かれているもの以上を期待していったのだけれど、その授業がそもそも一二年生を対象にした授業で、全般的な概要に終始していて、私としては物足りないものだった。しかし、11月に豪州のメルボルンの大学で開催される国際学会のことを知り、Sydneyでやり残したことを片付けるチャンスだと、三週間ほど出かけた。学会は三日間ほどで終わったが、どちらかというと国際法学の視点からの学会だったので、隔靴掻痒たる感があり、消化しきれない部分が大きく、自分の限界を知るいちベージになったといっても良かった。しかし、いわゆる東京裁判、極東軍事裁判の研究者の方々を知ることができた。勝者による一方的な断罪だとするいわゆる歴史修正者の皆さんがまなじりを決して対決しようとする人たちでもある。粟屋憲太郎先生の著作によって勉強したことは数知れない。
東京裁判「神話」の解体 ──パル、レーリンク、ウェブ三判事の相克 (ちくま新書)
- 作者:戸谷由麻,デイヴィッド・コーエン
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2018/11/23
- メディア: Kindle版