ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

「東京ローズ」

新国立劇場小ホール


イベントに行ったなんて、何年ぶりでしょうか。
ひょっとすると2020年2月のオペラ以来かもしれません。
新国立劇場小ホールのキャパはわずか400数十席。
9割方は埋まっていましたが、若い背広姿の人たちは多分スポンサー企業の動員でしょうね。この演目に興味を持つような層ではなさそう。
オリジナルもそうらしいけれど、キャストは6名全員が女性。
全員が主人公アイヴァ・郁子戸栗を入れ替わりで演じるというお客に混乱を引き起こすアイディア。
キャストの頑張りはよくわかるんだけれどこれじゃ、まるで宝塚ごっこみたい。
チャールズ・カズンズを持ってくるところは「おっ!」と思ったけれどプログラムには豪州兵捕虜とちゃんと書いてあるのに、舞台ではイギリス人だといっている。
最後までダキーノの名前がついてこない。あのポルトガル人の旦那が完全に無視されているのには納得がいかないなぁ。
今一つはアイヴァ戸栗が日本語があんまり上手くなかったことが表現されていない。全く無視されているのはどうかと思う。
つうわけで私の評価は高くない。というよりもこれは失敗作。そもそもアイヴァ戸栗について日本人で関心を持っている人が極端に少ないのだから、この演目を持ってきた企画の失敗。

 久しぶりにこういうところへでかけたので、なんだかえらくくたびれてしまった。まだリハビリが必要だろう。


【追記】ちなみにこちらが日経新聞の批評
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新国立劇場東京ローズ
不屈の人生、演技のリレーで

ミュージカル
2023年12月15日 14:30 [会員限定記事]

東京ローズ。第2次世界大戦中、連合国軍向けの英語放送をになった女性アナウンサーの愛称だ。複数いたとされる。自分がそうだと認めたただひとり、日系2世のアイバ・トグリの人生をたどる英国発のミュージカルである。気鋭の演出家、藤田俊太郎が気迫に満ちる日本版を放った。

左から山本咲希、鈴木瑛美子シルビア・グラブ飯野めぐみ=宮川 舞子撮影
米国で生まれ育ったアイバは病身の叔母を見舞いに来日し、日米開戦のあと帰れなくなる。日本社会になじめないままアナウンサーになるが、戦後に帰米すると国家反逆罪で裁かれてしまう。アイバは音楽で兵の心を慰めたのか、謀略を意図していたのか。

史実に沿うドキュメンタリー・ドラマで、いすや証言台があるだけの法廷劇の形をとる。6人の女優が時代ごとのアイバを演じ継ぎ、複数の役に扮する。めまぐるしさに最初戸惑うが、それぞれの個性が役とぶつかる勢いが音楽に乗り、不屈の人間像を増殖していく。新国立劇場の全役オーディション企画では最も成功した例か。経験豊富なシルビア・グラブがさすがだ。

力作だけに複雑な思いになるのは、本来日本で劇化されるべき題材だからかもしれない。2019年、新進劇団バーント・レモン・シアターが初演した。試演を重ねて練り上げる英国式の創作であり、その後を日本チームがリレーした。リフレインが生きる訳詞(土器屋利行)、打楽器を象徴的に用いる演奏(深沢桂子・村井一帆音楽監督)が効果的。日本チームも相当の頑張りで、流れるような音楽で全編をまとめあげる。

歴史的背景の織り込み方が難しく、原爆の衝撃など日本の場面には踏み込み不足も。むろん伸び代があるだろう。芸術監督の小川絵梨子訳。24日まで、新国立劇場小劇場。

編集委員 内田洋一)
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 この公演が全役オーディション企画で最も成功した例なんだとすると、日本の前途は暗い。