帰りに電車に乗ったら丁度うまい具合に女子中学生とおじさんの間に一人分あいていた。やれやれときっちりと座る。さて、iPodをとりだすか本を取り出すかと悩んでいると、私の前に立った30歳がらみの男が無言のうちに後ろを向いて腰を下ろすのだ。え!ここに!?俺が座っているのに!?慌てて飛び上がる!そいつは別になんの衒いも、迷いもなんにもなく、堂々と座る。信じられない事態を飲み込めない。なんだっていうんだ????訳が分からないままちょっと離れたところに立つと、次の駅で私の前があき、私はまた無事に座る。あの男は一体、私が立たなかったらどうするつもりだったのだろうか。しかし、どんな理屈が彼の中に成り立っているのだろうか。そう思ったら、にわかに怖くなってきたのだった。6つ目で彼は降りていた。
視覚にしょうがいのある人がとびらのすぐ横の席に座ると決まっている外国の電車で、それを知らないまま座っていた私の上に座ろうとしたしょうがいしゃの方と遭遇したことはあった。だけれども、彼は別にしょうがいがあったわけではない。