マンションの15階から68歳の女性を落とそうとして失敗し、とうとう9歳の男の子を突き落としたという。リストラされて辛かったと云うが、会社はリストラなんてしていない、半年ほどほとんど出てきていなかったんだという。自分を社会化することに失敗してしまう人の数が増えているのは確かかも知れない。
アイデンティティ・クライシスなんてことでもなくて、ただただ、自分に飛び抜けた能力を見いだしえないことで焦るという状況に陥り、そこから絶望するしかない人がひょっとすると驚くほどの数に上っているのかも知れない。そうしてその中から全てに厭世的になって何もかも放り出してしまう人もいる。そうして一度放り出してしまうとこの社会の仕組みの中では二度と取り返すことが難しい。一度失ってしまった自負心を取り返すのは簡単じゃない。それでもまだ焦り続けて諦めきれない人もいる。
しかし、それでも一度失いかけた社会性というものは歯車が2-3個狂ってしまうとなかなか元に戻らない。なにかあるとすぐにめげてしまう。その捌け口を弱者に求めたのでは本当になんにもならない。68歳の女性だって、転校してきてようやく3ヶ月の9歳の少年だってその中にどんなに辛いことを抱えているのかも知れないのだ。もちろんそれは分からないけれど。
一度社会性を失ってしまった人にとってエスタブリッシュメントの壁は高いのだけれど、その内側にいる人間から見るとそんなものはなんということもなく、そんなものは壁でもなんでもなくて、やる気の問題だということになる。ただやり直すという真摯な精神があれば乗り越えられるはずで、それをやろうとしない本人が悪い、なんでそんなこともできないんだ、ということになる。この高い壁のあっち側にいる人とこっち側にいる人の間に存在する精神的感受性というものには大きな差がある。再犯率が下がらないのはこんなところにも理由は当然あるのだろうと思う。一度立ち止まった人はどうしたらその流れの中に戻ることができるのだろうか。