ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

須田慎一郎語る

 CSの朝日ニュースターに須田慎一郎が出演。最近彼はちくま新書から「下流喰い」という本を出している。この番組のキャスターは宮崎哲也。サブ・キャスターは堤未果
消費者金融グレーゾーン金利を50年ぶりに廃止する方向で規制がなされることになっているが、これがどの様な影響を及ぼすのか、そしてここまで至った環境は何かをいつもの須田のはっきりした指摘でわかりやすく解説した。
 とにかく、これまで消費者金融の活動は全くの話、野放図であったといって良い。都市銀行までが後ろについて、朝から晩までコマーシャルを垂れ流してきた。犬を使い、グラビア・アイドルを使い、簡単だよ、すぐ貸すよと言い続けてきた。あっという時には、といいながらバランス良くね、なんてわざとらしく良い子ぶったセリフを語りながら貸金業規制法の枠を超える金利を大手を振ってとってきた。それでもそれを利用する人は後を絶たない、つまり必要とされているんだというのが業界の説明だ。これをなくしてしまえば、消費者金融は儲からなくなる。すると廃業する。現に既に廃業を検討している消費者金融もいるという。すると闇金が大手を振ることになるんじゃないかというのが業界の脅し文句だ。
 このほとんど見る人もいない、スポンサーも付かない朝日ニュースターだからこそいえるのだけれども、須田が今回の著書を出したのはちくまだからこそ出版できたわけで、週刊誌や月刊誌を発行している出版社であったら、有力スポンサーであった消費者金融業界についてはっきりと書くことができないのだという。犬のアイフルが融資や取り立てをめぐる違法行為で、金融庁から営業停止を受けた時、武富士が盗聴事件で処分を受けた時に、あるいは他の消費者金融が営業停止を受けたりすると、その消費者金融だけはコマーシャルがぱったり止まるが、他の消費者金融のコマーシャルは相変わらずどんどん流れる。つまりテレビを中心とした民放もまさにバブルが弾けたあとスポンサーに苦しむ時に入れ替わるようにやってきた消費者金融様々である。
 須田の話ではアイフルが転けた時にテレビも各局でアイフル・バッシングとなった。その際に出演した番組では事前に担当のディレクターからは「アイフルはどんなに叩いても構いません。ただし、他の消費者金融は社名を出して貰っては困ります」と釘を刺されたくらいだという。もちろん民間放送はスポンサーのために放送しているのであるから、とすれば当たり前すぎるほどの当たり前である。しかし、だからこそ、マスコミは儲かればなんでも良いという倫理観であってはならないと強調する。
 今度のグレーゾーン金利規制についての与党の考え方には紆余曲折があった。与謝野馨・前経済・金融担当大臣の姿勢も、与党内の議論でも大きくあちこちにぶれた。後藤田正純貸金業規制法の改正案が直前になって業界寄りに修正された事へ抗議して、金融担当政務官を辞任したことはもうほとんど忘れられているかも知れないが、巷間語られているようにこのバックグラウンドには、消費者金融に出資している米国資本が米国政府を使ってプレッシャーをかけ、与党がまごついたことがあると、須田はきっぱり言う。「アクセス・ジャーナル」2006/09/18付でも「米金融業界団体が、与謝野馨金融担当相と加藤良三駐米大使に書簡(8月8日付)を送り、グレーゾーン撤廃そのものに反対する意向を伝えていた」と伝えられている。そもそもグレーゾーン金利という名の全く法律違反である行為を続けながら利益を上げてきた、つまり利用者からだまし取ってきた企業の上場を双手をあげて迎えてきた東京証券市場、あるいはその組織のトップにその経営者を迎える経済団体というものは、確かに法律違反ではないにしろ、企業倫理が欠如しているとして指摘すべきであるとも須田ははっきりいう。
 消費者金融が儲からなくなって(つまり正常な法治国家における企業となって)利用者が闇金に流れても良いのか、という論理は、この国の社会保障制度、なかんずく公的扶助、あるいは労働環境が不備であるからこそ、闇金に利用者が流れざるを得ないという点をすっ飛ばしていると、ここも須田ははっきりと指摘している。

誰のための政府を必要とするのか・・・古いけれど・・

 新自由主義とはあたかも何をやっても儲けられる奴は自由に儲けたらよいというように解釈されているのかも知れないけれど、それはやっぱり間違いだろう。そうであれば無制限資本主義とでも呼ぶしかない。
 しかし、政治の本来の姿はこの国に暮らすひとりひとりの市民をきちんと暮らすことができるシステムを考え、そのシステムを規定通りに機能させることができるように調整していく、ということなんだろうと思う。例えば、11月29日に厚生労働相の諮問機関、労働政策審議会の分科会の公益委員が報告書の素案を示し、パートの正社員への転換推進を企業に義務付けたほか、処遇改善のため能力や経験を考慮して賃金を決めるよう求めた、と報じられ(共同・東京新聞・2006年11月29日 17時45分)ているが、これがもし、本当に実現されるのだとしたら(すぐに経済なんとか団体なんかから横やりが入って、もぞもぞと、それってなんの話?となってしまうんだろうが)、その正常なる機能のひとつだといっても良いだろう。談合によって高止まりの公共投資に支出し続ける予算を公正な姿に戻す、ということもそうだろう。須田がいうように、日雇い日給制派遣雇用なんてものまであるというのである。企業がどんな形態の雇用をしようと、日雇いだろうと、派遣だろうと、パートだろうと、雇用側に社会保険負担を必ず実行させなくては、国家による社会保障、その後の年金も含めた社会保障が成立しなくなる。派遣業法の改正は一元的には社会保障も負担せず、それまで企業の常識だった福利厚生という項目を無にし、企業の儲けを造るが、実はこの部分を企業に負担させることがなくなって、結果的に企業が搾取で儲かる結果、何が起きるのかといえば少なくない数の市民に対する公的扶助、あるいは高齢年金、医療負担を、隣にいるかも知れない他の各市民に負わせているのだ。しかも、その負担については全市民一律に、である。儲けた一部分の層が美味しい所をとって、実は全市民を奴隷にしているということだ。
 この上法人税を下げる!? 大きな企業は儲かっているんでしょ? 鉄会社の株価なんて見てご覧よ。嘘のような株価になっているぞ。50数ヶ月景気上向きなんでしょ? どこか他の国に企業が出て行っちゃうからなの? 出て行っちゃうんだったらもうとっくの昔に出て行っているだろう? ベトナムやテキサスで周辺企業を含めて新しい工場を立ち上げるのにこんなに苦労しているんですよ、トヨタは!とNHKまでヨイショしている企業だって日本のマーケットを捨てられないでしょ?(NHKは既に民放になっているんだから、未払い家庭を訴えるなんておかしいじゃないか、と逆に訴える人が出ないものかな?)
 福祉事務所の公的扶助担当はひとりで80世帯を担当するという。それでは現実的に個々のケースに即して考えるなんてことはできない。ひとりひとりをそのバックグラウンドから見ることはできない。民生委員、児童委員という制度は確かに今でもある。しかし、それがきちんと機能するほどに充分に配置されていないし、彼らは名誉職でしかない。なんでそんな立場の人がひょっとして逆ギレしてやられちゃうかも知れないところに思い切って踏み込むだろうか。
 この国ではなんでもそうなんだけれど、制度はある。さすがに先進国だ。そしてその制度に従ったシステムが動いている、「様に」見える。しかし、どれもこれも中途半端にしか実行されない。できないんだからワァワァ云ったってしょうがないじゃん。できる範囲でやろうよ。とりあえず動いてみようよ。そうはいってもない袖は振れないんだよ、となる。もっと現実的にやろうよ、という「大人」が出てくるんだよなぁ。国はまずその住民の生活の確保を一義的に考えるべきなんじゃないかなぁ、いくら新自由主義なる考え方がその時代に語られていたとしても。

中国新聞の社説

パート厚生年金 働きに見合った待遇を 06/11/25
 スーパーなどのパート従業員の中には、さまざまな仕事をこなし、責任の面でも正社員と変わらないケースが増えてきた。給与面の改善だけでなく、厚生年金の適用も当然すべきだ。だが現状はそうなっていない。
 待遇差を埋めるパート労働法改正は、安倍内閣の掲げる「再チャレンジ支援策」の柱の一つにもなっている。厚生年金については、適用基準を「所定労働時間が週約三十時間以上」から「二十時間以上」に引き下げる方針が、政府・与党でまとまった。来年の通常国会に改正案を出す予定だ。
 ただ、2004年の年金改正でも適用拡大をめざしたが、外食・流通業界の反対で先送りした経緯がある。今回もチェーンストア協会などは、企業が従業員と折半する保険料負担の増加などを理由に反対している。実現へどれだけ指導力を発揮できるか、安倍政権の真価が試されそうだ。
 厚生労働白書によると、パートなど非正規雇用の割合は年々増え、2003年には30%を突破した。うちパートが47%を占め、1200万人以上いる。企業がパートを採用する理由は「人件費が割安」(65%)「忙しい時間帯に対処」(39%)「簡単な仕事だから」(31%)など。安上がりで使いやすい労働力として不況を乗り切るリストラの支えとした面が強い。
 その後、景気は回復しても正社員は少ないまま。パートのうち「正社員で採用してくれる企業がなかった」のが理由の人は20%にも及ぶ。年収は90万―110万円程度が大半で、結婚など人生設計を立てにくく少子化の一因にもなっている。年金適用の拡大は正社員化への道筋づくりにもつながる。
 一方、サラリーマンの妻で勤務が週30時間未満、年収130万円未満の場合、現行では専業主婦と同じ扱いとなり、保険料を払わずに基礎年金を受け取ることができた。これに合わせて就労時間を調整してきた実情もある。厚生労働省の試算では、新基準で約300万人が新たに加入し、主婦パートも年金保険料を負担する代わりに、受給が月8000円程度増える。働く側の意識改革も欠かせない。
 政府は、新基準について中小企業では当面は困難と判断、従業員300人以下は対象から外す考えだ。1993年にパート労働法を制定して以来の抜本改正である。働き方にばらつきのあるパートの実態に即し、きめ細かい配慮をしながら待遇改善を進めてほしい。