ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

それは意味が違う

 先週の日曜日、8月12日のテレビ朝日の午後2時からのザ・スクープスペシャル第20弾、その第二部は鳥越俊太郎の731舞台の取材だったけれど、その前に放送された長野智子取材の第一部は「海外セカンドライフ、夢の果ての悲劇・・・団塊世代“第二の人生”、その光りと影」というタイトルだった。今でもこの番組はそのまま動画でこちらで見ることが出来る。
 最近特にテレビ朝日の土曜日の番組「人生の楽園」なんかもそうなんだけれど、団塊の世代がサラリーマンを定年になるのを視野に入れ、それよりちょっと前に仕事を辞めて移住し、畑仕事に精を出したり、焼き物に暮らしたり、あるいは生活費の安い東南アジアの都市に移住して日本で受け取る年金で充分な暮らしをしているという誠に羨ましいケースがどんどん報じられる。なんだかこれまで暮らしていたところで今までの延長線上で暮らしているのは乗り遅れていますよぉ〜、どんどん引っ越しましょうね〜!というキャンペーンに晒されているようだ。
 そこから起きる事件はいろいろある。海外での生活では異文化とのすれ違いが違和感となってしまったり、その先での狭い日本人社会での軋轢があったりする。国内でも、全くその先の人たちと協調できない人たちだっているし、自分の世界に沈殿して暮らすことがとても好きな人だっているけれど、いくら気候がよい、物価が安い、暮らしやすいとはいっても見ず知らずの地域で必ず快適に暮らしていけるという保証はない。
 ここで取り上げられているニュー・ジーランドのケースは30歳代で一旗揚げようと日本から移住した男性が日本人社会とも一線を画しながら、旅行代理店で成功したものの、ネズミ講まがいの組織に金を突っ込み、とうとう首が回らなくなって今年の4月に借家に放火して一家心中したと思われる事件である。この男性はたまたまご自身が団塊の世代といわれる年齢ではあるけれど、そのバックグラウンドからいったら、定年を迎えていわゆる第二の人生を海外に模索する人たちとは大きく異なる事件だといっても良い。確かに海外で暮らすという点では注意しなくてはならないポイントには共通するものがいくつかあるだろう。自分で勝手に解釈してディプレッション・スパイラルに落ち込まないようにしようとか、できるだけ社交的に暮らすことを考えようとか、怪しい話には近づくなといったことである。しかし、そうした第二の人生ビジネスに振り回されないように気をつけてねという切り口の対象として持ってくるにはあまりにも違和感の漂う事件である。海外の邦人社会には様々な要素があるけれど、そうした観点での異文化摩擦の問題として取り上げるケースではないだろうか。こういう的はずれな視点では、取り上げられた男性が気の毒でもあるし、報道番組としてはなはだ完成度が低い。鳥越俊太郎長野智子がこの企画にどれほどの肩入れをしているのか知らないが、現地にまで取材に行っている中で、このタイトルとの齟齬に気がついても良いのではないだろうか。