ほぼ足りてまだ欲 その先

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「先住民族の権利に関する宣言」

 2007年9月13日の国連総会において「先住民族の権利に関する宣言(Declaration on the Rights of Indigenous Peoples)」が採択されている(こちら)。これによって世界3億7千万人の先住民族自治、自主決定、土地支配、資源利用に対する権利が承認されたことになる。しかし、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、米国は国連宣言の署名を拒否している。これら諸国は欧州各地からの移民によって先住民族が大変に圧迫された歴史を持つ国でもある。こちらの記事によるとこの宣言の起草には、先住民族代表者、各国政府、NGOらの努力により20年もの月日を要したという。2006年の国連総会では米国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、コロンビア、ロシア、スリナム、グヤナ、いくつかのアフリカ諸国(ナミビアなど)の反対により葬り去られたという経緯があるのだという(こちら)のだ。ということは2007年には一歩前進して採択されたのだということになる。
 勿論わが国もこの宣言に署名しているのだけれど、わが国の先住民たるアイヌの人たちに対して日本政府の動きが(相変わらず)鈍いことに業を煮やして、首都圏に暮らすアイヌの人々が先週の日曜日に有楽町駅前で署名を求めてデモンストレーションをしたことが報じられていた。

先住民族と認めて」 首都圏のアイヌの人々が署名集め (Asahi.net 2008年03月24日00時04分) アイヌ民族を日本の先住民族として認めるよう政府に要望するため、首都圏に暮らすアイヌの人びとでつくる「アイヌウタリ連絡会」(丸子美記子代表)のメンバー約30人が23日、手縫いの刺繍(ししゅう)を施した「アミップ」(民族衣装)を着て、東京・有楽町の街頭で署名集めをした。国連は昨年9月の総会で「先住民族の権利に関する宣言」を採択。だが、宣言に賛成した日本政府の動きが鈍いことから街頭活動にのり出した。首都圏に住むアイヌは約1万人と推定されるが、差別体験から隠して暮らす人が少なくないという。千葉県の村上恵さん(23)は「政府が認めないため、アイヌアイヌであることを堂々と語れない。先住民族でないなら私たちは何なんでしょうか」と話した。会では、北海道・洞爺湖(とうやこ)での7月のG8サミットに向けて政府や国会議員への働きかけも強める方針だ。

 既報の様に(こちら)2007年9月に署名を拒否した4ヶ国のうち、豪州はその後の総選挙でジョン・ハワード保守連合政権が失脚してケビン・ラッド労働党政権が1996年以来誕生し、2008年2月12日の議会において豪州政府が先住民族の子どもたちを親から強制的に引き離した一連のStolen Generation政策についてケビン・ラッド首相がアボリジナル・ピープルに対して謝罪のスピーチをした。豪州にとっては画期的な出来事だったといって良く、国連人権委員会もこれに対して「歓迎する」旨のメッセージを発表している(こちら)。
 豪州は英国が流刑地として、独立してしまった米国の代わりに使い出したことで知られているが、はっきり言って1970年代初めという今からたった40年弱ほど昔まで、圧倒的な民族的差別主義国家だったといって良い。しかし、今や異文化の共生なくして考えられない国家となっている。時代の流れだったという云い方もできるが、政権が交代する、そしてそれを支持していく国民のバランス感覚がたったそれだけの期間で養われるのかと思うとこれは心底驚かずにはいられない。それではわが国はどうだろうかと考えると、こうしたアイヌ民族の人たちの声を聞くまでもなく、遅々として進んでいないのだろうと推測ができる。この点から見ても私達にはこれまでの自民党を中心とした政権を交代させる必要があるのではないだろうか。