ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

アルカトラズ・アイランド

これが5度目か・・

 多分San Franciscoに最後にやってきたのは1985年頃だったのではなかったかと思う。今は亡きSONY盛田昭夫セイコーの服部一郎が日本側の代表的役割を果たしていた日本カリフォルニア経済人会議だったか日米経済人会議だったかがこの地で開かれて、それに職務として出席したのが最後だった様である。古くは1970年、1972年、1979年にこの地を訪れているからその当時は結構土地勘を持っていた。しかしなんといっても時間が経っている。地理的には変わっていないからどっちに行けば何があるのか位は分かる。しかし、なんといっても20年以上の空白だ。今回は36年ぶりにこの地を訪れ、あげくに前回の時のことを全く覚えていない連れあい(なにしろ36年前に行ったことのある場所すら覚えていないというのだ)のために、2-3時間の市内観光とアルカトラズ・アイランドの観光をセットした。
 典型的なコースを関西弁で早口で、車を走らせている間に全部をとにかく喋ってしまおうという女性ガイドの方に案内していただく。私がこれまで見たことのないものとしてはGolden Gate Parkの中の(パナマ運河開通記念博覧会の時のパビリオンを造り直したという)ギリシア風の建物を見たことくらいである。それにしてもtwin peaksにはあんなに大きなアンテナが建っていた様な記憶がない。ここは36年前に私を連れあいが撮った写真が残っているから私は良く覚えているのだけれど、その撮影者たる連れあいは全く覚えていないというのである。ガイドの方はこちらに暮らし始めてから11年ほどとおっしゃっておられたけれど、相変わらず坂道の説明をするのにスティーブ・マックィーンの「ブリット」を引き合いに出す。これがあの種のカー・チェイスの走りだからといって。そうはいってもあの映画はもう既に40年経つわけで、まだあの映画を知っているのは全日本人人口の半分以下に違いない。今日のこのガイドに乗っているのは新婚と覚しきカップルと一人で参加の40歳前後の女性、そしてあきらかに50代と思われる仕事のついでの休日を過ごしている男性一人。この映画を見た可能性があるのはちょうど半分というところか。
 ロンバート・ストリートはあじさいが満開になっていて本当に美しかったけれど、どうして皆さんこの通りをこんなにご覧になりたいのだろうかと不思議。ケーブルカーには何人もの人が列をなしていてなかなか乗れそうもない。大分改造をした様子がうかがえる。

定番観光地

 かつてはFisherman's Wharfといえばあのケーブルカーの終点付近を総称していて、そこに昔は缶詰工場だったところをショッピングモールにした「キャナリーズ」がとてもモダーンだった。しかし、今はまるでサンタモニカのpierのような、いやいやあれよりはもっと洗練されているという声が飛んできそうだけれど、Pier 39を中心にした地域がとても賑やかだ。かつては島に渡るつもりも、湾内クルーズをするつもりもなかったからこっちの方に来るチャンスもなかった。
 Golden Gateも36年前にはバスで向こう岸に渡って向こうからSan Franciscoのダウンタウンを見た記憶がある。今回は渡りはしなかったけれど、ちょっとだけ歩道を歩いた。歩いたのは生まれて初めてである。近年では超望遠レンズで橋から飛び込む人を撮影したビデオを公開して物議をかもしたという話を聞いたことがある。なるほど橋にはそんな人のために「Crisis Counseling」と書かれた掲示があり、電話機が設定されている。この橋から下を覗くとダウンタウン側の湾内に3-4人のサーファーが浮かんでいる。こんなところで?と首をかしげてしまうけれど、よく見ると橋のタワーから内側に向かって波が起きる。そしてあっという間に中のひとりがその波に乗った。ビーチもないんだから相当腕のある奴らに違いない。そのもうちょっと湾に入ったあたりには3-4隻のあたかもバス・ボートの様な船が出ていてまさにバス・フィッシングの様に立ってルアーを投げているフィッシャーがいる。車でさぁーっとこの橋を渡っていたらほとんど気がつかない景色をこうして歩くと見ることが出来る。
 Pier 39でガイドとは分かれる。たった2時間程のガイデッド・ツアーでこれにアルカトラズ島の入場料込みのフェリー代が入って一人100ドルする。島に午後渡るフェリー代はひとり24.5ドルだから2時間のガイド料込み市内観光代が75ドルくらいしたことになり、大変な物いりだったことが分かる。しかし、日本語のガイドを雇うことを考えればこれでまぁまぁ妥当ということなんだろう。この街は都会の割には比較的治安が保たれている方だけれどもうっかり入らない方がよい場所はある訳で、そんなところを避けることもできる訳だ。しかし、行きたいところには行かれないという不便はもちろんある。
 36年前にも一緒に食べたはずのここの名物ということになっているsourdough breadの器に入った「クラムチャウダー」を食べることになる。どこで食べたってこんなものは賭みたいなものだからさらっと入ってしまえとPier 39に入っていきすぐの右側にある店に入った。どこかの本の写真にでも載っている様な典型的なものをファスト・フッド店の様なところで食す。あとで気がついたのはこの店はFisherman's Wharfにも大規模な店を持ち、ダウンタウンでも見かける名の知れた「Boudin」というお店だった。いつもどこにいっても何かを頼むと二人で充分という量が出てくるので、これも一人前しか頼まなかったのだけれど、食べ始めてみるとパンをくりぬいた部分はそれ程深くなくて、あれ!という程度の量だったのはちょっとがっかりだ。取り敢えず腹を満たしてから界隈を冷やかして歩く。Pier 39ではレストルームが一階の一ヶ所しか見付けられなくてそこはいつ見ても長蛇の列だった。連れあいを待っている間に涼しい風に吹かれているのは結構気分がよいものだ。

いよいよアルカトラズ島へ

 14:20のフェリーの切符を持たされていたので14:05位にPier 33のフェリー乗り場に行ってみると結構長蛇の列ができている。そしてその列がなかなか進まない。なんでこんなにゆっくりなのか不思議でしょうがない。ぞろぞろとデレデレと一番疲れるペースの時間を過ごして船に近づいていってようやくわかったのはなんと一枚10ドルだか20ドルだかもする記念写真の撮影をしているのである。バックにはサンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ島が貼ってあっていかにも二人でアルカトラズ島に行ってきたんだもんね写真になっていた。私たちもお定まりの撮影に応じるけれど、この類の写真を国内でも一切買ったことがないのでまったく関心がない。しかし、よく考えてみると10年前にケアンズで船に乗って観光に行った時にこの手の写真を買ったことが一度だけある。多分あれが唯一の経験だろうか。娘を加えて三人で撮影したのは多分あれだけかも知れない。
 アルカトラズ島に行くとイヤフォンガイドを手にして刑務所の中を歩くことができる。かかりの人に日本語も聴けるんだよね、と聞くと早速2台を日本語に設定してくれた。何人かの元看守の方たち、そして元囚人だった人たちの説明を録音してあって音も入っているし、とても臨場感のあるストリーに従って歩くことができる。これはなかなか面白い。アルカトラズ島はいつ行ってもダウンタウンより寒いといわれれけれど、確かにこんなに晴れ上がっているにもかかわらず風は冷たくて、一度外に出た時に慌ててウィンド・ブレーカーを取りだして着込む。滞在時間2時間ちょっとで帰りの船に乗る。もっとゆっくりしてきても良かったのだけれど、なんだかすっかり疲れてしまった。

随分様子は変わった

 さて、どうやって帰ろうかと思案を巡らすがケーブルカーはかなり長蛇の列の様だし、なにしろひとり5ドルする。お腹も減っていることでもあるし、この辺でのもうひとつの名物ということになっているDungeness Crabを食べない訳には行かないだろうということで、さっき歩き回った時にここなら安くはなさそうだけれど多分間違いはないだろうというレストランを見付けていたからそこに入った。どんな目的でそんなことになっているのか分からないけれど、入口のメニューを見ているとレセプションにいるなんとも頼りなげな素人然とした若い女性が声をかけてくる。店構えの割にはなんだか怪しげな感じだ。しかし、店に入ってやってきたウェイターの伯父さんはとても愛想が良くて、料理の説明も適確で、安心する。とにかくDungeness Crabさえ食べられればいい訳で、余計なものは頼むつもりもない。シェアしたいからそうしてねと頼む。
 あの北京オリンピック聖火リレー騒ぎで知ったのだけれど、このピアー沿いにはF-Lineと呼ばれる全世界から廃棄になった車両を集めて運行している路面電車がある。乗車賃も1.50ドルだからと帰りにこれに乗ったらほとんど東京のラッシュ・アワーのような混み具合。なにしろお金を払う前の乗車口からだけでは乗り切れないから後ろの降車口も開けて乗れるだけ乗る。ぎゅうぎゅう詰めである。Market Streetのフェリー・ターミナルのところでどっと人が降りて少し楽になるもののまだまだ混んでいる。次の停留場で降りてしまう。気がついてみると1.50ドルの乗車賃すら支払っていないのである。乗り逃げである。昔のケーブルカーも結構こんな感じで、途中から飛び乗って2-3ブロック行く時はぽろっと手を離して降りていたことを想い出す。これからは広島や鹿児島で走っていた車輌もやって来るというのはガイドから聴いた話。
 Market Streetを淡々とPowell Streetまで歩く。これで一周したことになる。
 Solanoで火事が起きているそうでテレビでは盛んに報じている。こんな暑い陽気が2日も続いたのだからそんなことになっても不思議はないかも知れない。66所帯が危ないかも知れないとテレビはいう。