ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

国営企業を抱えてどうするだろう

 Bloombergのニュースに依ればビッグスリーに対する150億ドル融資は週内にも法案が成立して実施されることになるだろうということだ。なにしろクライスラーGMは3月末まで存続させるためには少なくとも140億ドル融資をして欲しいといっているのだから。
 「年間の融資の金利は5%とされ、各社の再建が計画通り進まない場合は監視機関が早期返済を求める」ということになっているらしいけれど、そんな場合に返済が本当に出来るのか、という疑問がある。
 また、「融資完済までの間は無配で、政府は融資額の20%に相当するワラント(株式取得権)を取得」というが、これでは結局国営企業になってもどうにもならなくなってしまうということにならないだろうか。
 これに対して日経産業部出身でテレビ東京経済部長からNY支局長を歴任。今は大阪経済大学大学院客員教授で、経済評論家である岡田晃は「救済策は一時しのぎ」にしかならないと警鐘を鳴らしている(こちら)。
 彼らはこれまでも何度も政府に助けてもらってきた。金融危機にかこつけているけれど、彼らの1998年に70%もあった国内シェアは今や50%を割っているし、GMの赤字最終損益は2005年以来のことだとしている。つまり構造的な問題を抱えてきているんだということなのだ。しかも円高にして日本車の輸出を押しとどめるべく陳情したり、日本の市場開放を迫ってきていたことを想い出すべきだとしている。
 米国の経営者は商品の質の向上を図ることに対する注力よりも誰かにどうにかしてより高いレートで経営権を譲ることを最大の命題にしているのではなかったのだろうか。
 かつて米国の鉄鋼業は世界を席巻していた。東京で最初の地下鉄に使われていたレールはベツレヘム・スチール製だった。しかし、今やもう見る影もない。設備投資を怠り、巧い具合に叩かれていた日本資本を引きずり込んだ挙げ句の果てに業界統合されて現在に至るも世界のイニシアティブを掴んでいるとは到底言い難い。尤も鉄鋼業界の場合には今やインド人のミタル親子に牛耳られつつあるといっても良いのではないかと思えるし、日本の鉄鋼業も覚悟してかからねばならないのだろうけれど。
 つまり、岡田晃はビッグスリーが自ら本気になって構造改革に取り込まない限り、これは一時しのぎに過ぎない、というのである。
 それにしても強力な組合の要求によって実現された「退職者の医療費を会社が負担する」制度がそのままになっているというのは大いに足かせだろうけれど、これはヒラリー・クリントンがかつて主張していたように米国が医療保険を保険料の高い民間だけに任せきってきた、その大きなお釣りでもある。
 こうしてみてくるとこれまでの自動車メーカーの経営者が犯してきたと自らがいっている「mistakes」には根本的な米国の社会構造に起因する部分があるということになる。「焼け石に水救済法」とでも名付けるべきなのかも知れない。