ほぼ足りてまだ欲 その先

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単純な事故

 南日本造船の大在工場で艤装中のPCC(自動車運搬船)へ架けた作業用のタラップが作業者が船に向かって上がっていくところで船側が外れ、落下。2人が死亡。23→24人が怪我。
 産経新聞の写真を見るととても新しい工場のよう。船は船底のペンキがまだ最終仕上げ塗装になっていないところを見るとまだ艤装中で、ひょっとするとドックから偽装岸壁に移したばかりなのかも知れない。非常に単純な事故であるが、それだけに問題は大きい。こんな簡単なことに安全意識が働かないという職場環境ということなのかと判断されるだろう。
 読売の記事によるとタラップは通常船体に対してフラットに据え付けられるのに、この日は斜めになっていたと書かれているけれど、斜めにこうした作業用のタラップを架けるのは造船所では当たり前。まさか南日本造船が知らなかったわけはないだろう。
 しかし、タラップの船体側のフックの4本のボルトの一部が壊れているのが発見されていることを報じている。
 西日本新聞の記事によるとこのタラップは改造されたそうで、改造後、初めて設置したのだそうだ。死者、けが人とも全て下請け従業員。
 南日本造船は元々大分県臼杵の中規模造船所。大在工場は昨年の5月に正式に開所式を行った新進気鋭の造船所。知らない人には理解できないかも知れないけれど、造船業界はここ数年、かつての構造不況業種だなんて想い出すこともできないほどの好況に沸き立っていた。多分今でも受注残は3-4年分はあるのではないだろうか。採算がどうかは別として。
 しかも、典型的な労働集約産業である造船業は正規労働者の力によってなんて全く成り立たない業界で、この南日本造船もHPを見ると本社、東京営業所、大在工場、臼杵工場、大分工場全部を含めても社員数はたったの100人強である。つまり現場の作業者の殆どは下請け企業の作業者で、どんな契約形態で従事しているのかはわからない。
 外国人労働者の研修・実習ビザでの就労者も造船業界にはいるとも聞いている。自動車産業の現場と違って契約切れとなっていないからあまり問題にはなっていないけれど、その辺までほじくられることになると単純な事故で終わらなくなる可能性だってある。
 (追加:090124 タラップの重量は会社が思っていた3トンどころではなく、6.8トンもあったのだそうで、「タラップがどれほどの重さに耐えられるのかを計算する基礎数値さえ知らなかった疑い」があるという。このタラップを設計したのは誰だ?)
(追記:090125 誰も強度を計算していなかったようだ。「南日本造船の幹部は24日の記者会見で「強度の審査は我々がやるべきだった」との認識を示した。(2009年1月25日09時07分 読売新聞)」 では、一体このタラップをこの様なデザインで制作しろ、あるいはあのフックを造れと指示したのは誰なのか。まさかいくらなんでも全てを発注先の鉄工所に任せてしまったのだろうか。