ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

品木ダム

 前から書いているように10年前くらいまで、私は群馬県の六合(くに)村という山の中にほぼ毎年、多い時には年に数回遊びに行っていた。長野原駅前を通り過ぎてしばらく行くと右に曲がって292号線という道路に入ることができる。吾妻線をくぐると左手にかつての鉄道の橋の後が見られる。この道を辿って登っていくと、六合村役場を通り過ぎてそのまま行くと東京電力が管理している野反湖にまで辿り着くことができる。
 この道を12-3kmほど登ると右へ野反湖、左に草津と分かれる。かつては野反湖に行く方がまっすぐだったのだけれど、いつの間にか草津に行く路の方が優先になっている。
 この路をとって2kmほど行くと右に降りる路が現れてそこの標識には「→品木ダム」と書いてある。まったく村に行く路でこんなところに入ってきて良いのだろうかと多くの人は逡巡する。降りきったところはエメラルド・ブルーの不気味な色が鮮やかな小さな湖である。この人工湖「上州湯の湖」は大きな湖ではないのに、いつでも浚渫船が浮かんでいていつでも作業をしているように見える。その浚渫した汚泥をダンプカーが運び出すので、注意が必要だ。
 品木ダムの堰堤上は車が一台通れるようになっていて向こうから車が来ていないかを判断して向こうに渡る。そこから先は急な路をつづれ織りに登っていくとあちらにぽつんこちらにぽつんと民家が見える。何を家業にしているのか、と思うくらいの山の中である。ここから先は山の中の一本道で上まであがると突然開けた開拓地に到達する。
 この辺りはバブルの頃にゴルフ場とスキー場の開発話が持ち上がり、オオワシがいるということから環境庁のアセスメントが行われたり、群馬県の企業局が長笹沢川の上流にダムを造ったりしたものだから道路も拡張されたものの、バブルがはじけてこの話も頓挫。妙におかしな具合に草津からの新しい道路が通じたのだけれど、無理矢理作ったためか、数年前には崖が崩れて通行できなくなったりした。あの道路は誰の金でできたのか知らないけれど、民間の金でないことは確かだ。今やものの見事に滅多に人が通らない。なにしろその先に用事がある人は数えるほどだからだ。
 さて、その品木ダムだけれど、私は硫酸銅が流れてあんな色になっているのかと思っていた。この辺りには特殊なミネラル分が含まれた水の流れ込みがあるのだろうと。しかし、ようやくわかったのは草津の温泉から大量に流れ出てきている強酸性の水に上流で石灰を溶かした水を大量に加えて中和させ、その化学反応で生成された化合物を含んだ水が品木ダムで遮られてあの湖ができているのだった。だから、化合物がいつまでもこの湖には沈殿するわけで、それをえっちらおっちら浚渫して回収しているわけだ。
 この化合物は一体なんなのか、そしてそれはどんな性状を呈しているのかがわからない。もちろん品木ダムのHPでは「硫酸カルシウムと塩化カルシウムという中和生成物が沈殿・堆積します」と書かれているけれど、それがどんなものかは書かれていない。胃薬は胃酸を中和する成分を含んでいるから効くんだということが書かれていたりジャムなんかにはPH調整剤が入っているし、シャンプーはアルカリだからリンスは酸でこれで中和しているんだよなんて書いてあるけれど、それが一体この場合にどんな意味をもたらすというのだろうか。酸+アルカリ=塩+水とも書いてある。
 ところが「あしたの会」のHPを見ると気になることが書いてある。

  • 八ッ場ダムは、環境影響評価法が制定される1997年以前に事業が始まったため、環境アセス法に基づく環境影響評価が行われていない」
  • 「上流に温泉、スキー場、高原野菜農地、牧畜が盛んなので生活排水、農薬等が流入している」
  • 「(品木ダムの浚渫土の)処分場の用地確保が難しい状況となっています(浚渫物はヒ素を含むため、流域外での処分が困難)」

 もちろん法律上からいったら事業決定がなされた時になかった法律なんかに準拠する必要はないわけで正々堂々としたものであるわけだけれど、そうした法整備がある中で、全く旧態依然たる基準に乗っ取ったものができてしまうというのはいかにも釈然としない。
 現地に行ってみないと全く理解されないと思うけれど、あのダム地点に至る間には多くの農地が存在しているわけで、あそこから流れ込んでくる水が飲料水になっていくのかと考えるとそら恐ろしい。いやいや、今時そんなことをいっている場合じゃないんだ、今の東京都の水源を考えたらそんなこといってられないよといわれたら反論のしようもないんだけれど、それはひょっとしてどうせ毒を喰うなら同じだという論理か。
 一番気になるのは最後の「浚渫物はヒ素を含む」という表記である。これは国交省の品木ダムのサイトには何も書かれていない。ただ、塩と水になるだけだと書いてある。尤も塩と水になるだけだったらその堆積物は塩ですか?ということになる。
 「あしたの会」が書いている「ヒ素を含む」という根拠はどこにあるのか、そしてそれは真実なのか。
 いずれにしてもどうしてあの水をあえて私たちは飲もうとするのか。こうした点をなぜマスコミは解明してくれないのだろうか。