その地方空港大無駄論が語られる中で記憶に新しい静岡富士山空港だけれど、その空港建設、管理でまだまだごたごたが続く。
とにかく石川前知事がその職務を辞するから木を切らせてくれと云って開港した空港だけれど、その後任の知事選挙で民主党が推薦して当選した川勝平太知事がなんつうこともなく、実は石川前知事の息がかかった立場にあるというところが問題を複雑にしている。
県議会の第一党は自民党で全議席74議席のうちの40議席を占めている。
川勝県知事は県議会総務委員会にこれまで空港建設を担当してきた空港部を廃止する条例案を出した。自民党県議団はこれを否決しようと拘束をかけた。しかし、5人の自民委員のうち一人は退席、二人が賛成に回ったことによって7対2で県空港部を廃止することに賛成した。県議会本会議に回される。
空港部を廃止してどうするのかというと利活用部門を企画部に、施設整備や維持管理部門を建設部にそれぞれ移管するというのだ。
なんでまたこんな年度の中途半端なところで県庁内の組織をいじらなければならないのか。きちんと2009年度の決算総括ができる形で始末すればよいことではないか、と反対意見が出されている。しかし、それでなくても利用効率が上がらない中で、はやく企画部に渡して活用検討をさせろという意見もある。もちろん少しでも支出を削減するんだという主張ができそうだけれど。
ところが空港部がこれまで空港開設に関して行ってきたことの不始末がこの期に及んでも露呈してきている。
今年の2月に空港周辺の民有地に立つ木々を所有者に何ら断ることもなく伐採してしまっていたことが暴露されたのだ。地権者は5月になってようやく気がつき、知事は8月には気がついていたはずなのに、それをここまで隠してきた。(多分)毎日新聞がこれを掴んで書こうとした直前に会見で語ったらしい。地権者も会見に答えて「県が強制的に作った境界を(県が自らそれを)乗り越えた」と発言。
今月6日に臨時県議会企画空港委員会が開催された。
「重ねての不始末を議会と県民に改めておわび申し上げます」。委員会の冒頭、岩崎富夫空港部長はこう述べて頭を下げ、「民有林の所有者に誠意を持った対応を行い、ご理解を頂けるよう最大限努力し、適切な情報提供に徹底して取り組んでいく」と改善を約束した。公表が遅れた原因について、岩崎部長は「地権者の意向をくみ、用地交渉の延長線上で考えていた」などと弁解した。(msn産経ニュース静岡版2009.10.7 02:23)
それでなくても空港ができればなんとでもなるとこれまでに様々な失態が繰り返されてきたこの空港だからこれだけの話じゃなくてまだまだ隠してきていることがあるのではないか、それを早いところドガチャガしてしまうために空港部を廃止してしまおうとしているのではないかという疑念を呼ぶ。なんだかまだなにか公になるとまずいものがあるような気配を感じる。
この空港は日本航空から撤退対象として語られているけれど、前にも書いたが、地元産業の大企業、鈴与が中心になって創ったフジドリームエアラインズという航空会社がある。
「7月に3路線で就航したFuji Dream Airlinesは、小松便が28.4%、熊本便が40.2%、鹿児島便が48.5%(毎日新聞 静岡版2009年10月6日)」という状態で、空席がたくさんある状態では安売りをしていくという方針をとることになったようだ。静岡-福岡線から日本航空が撤退するならFDAが就航していくという意向も示しているようだ。ところがこの路線は静岡県と日本航空の間では搭乗率保証が締結されていて日本航空としては撤退する意味がない。静岡県民からしたら搭乗率保証なしでFDAが飛んでくれた方が税がタレ流れなくて良い、ということにはなるのかも知れないけれど。
無理矢理需要予測を作り上げて、無理矢理アセスメントを完成させて、ここまでして空港を創りたくなる理由というのは一体何だろうか。別段なんの利権も絡んでいなかったとしたらこうしたプロジェクトを推進していく理由と意味が見いだせない。
県空港部が10月1日発表した静岡空港の9月の利用状況によると、国内6路線の搭乗者数は計3万8932人で、平均搭乗率は60,6%だった。
路線別にみると、最も高かったのは札幌線79.0%。次いで沖縄線73.7%、福岡線62.9%、鹿児島線48.5%、熊本線40.2%、小松線28.4%の順だった。
国際線では、大韓航空とアシアナ航空が運航するソウル線が55.9%(中日新聞 静岡版 2009年10月2日)
これを見ると意外と健闘しているじゃないかという気がしないではないが航空会社の実入りとそれとは一致しているわけではない。
- 大館能代空港は1998年オープン。利用者を47万5000人と予測→2008年の利用者は12万1028人
- 福島空港:利用者128万人と予測→2008年度43万人日航が関西国際空港、伊丹空港、那覇空港を結ぶ3路線をすべて廃止
- 能登空港:東京・羽田空港との1日2往復便のみ。5年目の搭乗率65.4%と健闘。県が観光誘致に注力。(もちろん搭乗率保証があるが能登空港の場合はそれを上回って航空会社からリファンドされたそうだ)
(毎日新聞ニュースがわかる2009年9月号)
- 長野県営松本空港:日航子会社の日本エアコミューターが就航。2008年度は毎日運航の大阪線が47.7%、週4便の札幌線が76.8%、週3便の福岡線が62.7% これが撤退すると定期航路なしに。(msn産経ニュース長野版2009.9.17 02:33)
091008追記
7日の静岡県議会の本会議で県空港部を廃止する条例案は賛成43、反対27、無効1で可決され、同部は廃止されることが決まった。投票は無記名で行われたが、自民県議の10人前後が造反したと見られる。
自民党静岡県連幹事長ら三役が7日、辞任を表明。(asahi.com 2009年10月8日2時58分)