ほぼ足りてまだ欲 その先

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笑い

 お笑い芸の中には自分を蔑んで取る笑いというものがある。「噺家なんぞのいうことを信用しちゃいけません」と噺家自身がいうのもそれのひとつだ。これは他の人を傷つけるということがない。しかし、特定の他人を揶揄してとる笑いほど、下卑たものはない。高齢者を笑いものにする噺にこうしたものが多い。病院に来るのは元気な年寄りで、「あの人最近見ないね、病気にでもなったか」という小噺がある。高齢者医療費が無料だった頃には良くこの手の話が語られた。実際にそうだったからでもある。
 それを爺婆が言うのはよい。しかし、元気満々、どんなことがあったって生き残るだろうと思われる元気者がこれをやるのは私は好きじゃない。
 噺家は良く老人ホームの慰問をやってくれる。若者には我慢できないのんびりしたペースの古いパターンの笑いが高齢者には実に安心だったりする。しかし、他の場所にいって、そうした場所をさかなに笑いを取るのは卑怯だし、下卑ている。
 「眠っちゃっている老人もいるし、残りの半分くらいはどうせ聞こえてやしませんでね」といった噺家がいた。「お前もすぐにそうなるんだよ!」といってやりたかった。そういう噺家を持て囃す手合いがいる。だから私は文珍の「老婆の休日」という新作も嫌いだ。