ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

吉井英勝 その6

 確か、元不良小説作家も「日本はだね、その気になったら、2年程度で直ぐに核兵器なんてのは作れるんですよ」とうそぶいていた。彼の盟友たる元坊ちゃん首相ふたりも「当面は」なんちゃっているけれど、日本の法律では明白に核兵器保有は禁じられている。それはこの国会の質問の中にも現れている。
 確かに、私達は共産党の質問なんて大して時間もないし、どうせ野党としたって切り札を握っているわけでもないし、「はい、はい、わかりましたよ」なんていっちゃって聞いていやしないのだけれど、正しいことは正しい、正しくないことは正しくないと明確にしていかないと、こんなことになっちまうんだということが身に沁みてわかった。
 はっきりいって日本共産党に吉井英勝なんて衆議院議員がいるなんて知らなかったし、こんなにしっかりと追求していることも知らなかった。それはなぜかといったら殆どマスコミが彼が追求している論点を読者、視聴者に提供しないからだろう。

衆議院内閣委員会2006年10月27日
日本共産党・吉井英勝:
 日本共産党の吉井英勝です。
 私、最初に、核開発といいますか、核兵器にかかわる問題から伺っていきたいと思います。
 日本の分裂性プルトニウム保有量、これは文部科学省関係の分で別に4.2トンあるわけですけれども、これを除いて、今の原子力発電所から出てきている分で、ことし(2006年)1月6日現在で、返還プルトニウムと国内再処理分合わせますと、日本の持っている分裂性プルトニウムの量は26.2トンだというふうに資源エネルギー庁から説明を受けておりますが、この量が変わっているのかどうか、これを最初に伺っておきます。

舟木隆・資源エネルギー庁電力・ガス事業部長:
 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、ことしの9月に原子力委員会内閣府文部科学省経済産業省の連名で報告をいたしました「我が国のプルトニウム管理状況」では、原子炉施設に保管されています分離プルトニウムは、実用発電炉分が415kgでございます。また、海外に保管中の分離プルトニウムは37,852kgとなっております。

日本共産党・吉井英勝:
 何か違う数字を言うてはるの違うかと思うんですが、ことし、ちゃんと電事連の方でまとめた数字でいただいておるんですね。同じ数字を持っておりますので、私、それで確認したんです。
 昨日も伝えてありますが、分裂性プルトニウムで海外25.6トン、東海の方で0.6トン、合わせて26.2トン、分裂性プルトニウムを持っているということですが、この確認だけなんですよ。

舟木隆・資源エネルギー庁電力・ガス事業部長:
 お答え申し上げます。
 私が先ほどお答え申し上げましたのは分離プルトニウム全体の量でございまして、分裂性プルトニウムに限って申し上げれば、先生御指摘のとおりでございます。

日本共産党・吉井英勝:
 分裂性も非分裂性も合わせた数字でももちろんそれはいいわけなんですけれども、伺ったのはそっちだったんです。
 では次に、分裂性プルトニウムの臨界量、これは幾らになりますか。

青山伸・資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官:
 プルトニウムのいろいろな形状によっても異なるかと思われますので、ただいまちょっと正確な数字を手元に持っておりませんので、大変申しわけございません。数kgのオーダーであろうかと思いますけれども、正確なところを今申し上げられません。

日本共産党・吉井英勝:
 きのうこれ質問するとちゃんと言っておきましたので。ひょっとしたら、原子力安全委員長、私の方がそんなこと知っているからというお顔をしていらっしゃるので聞かせていただいてもいいんですが、これは、原子爆弾の研究というのは、リチャード・ローズという人が、かなり分厚いものですが、アメリカでの開発の歴史を含めてありますが、分裂性プルトニウム臨界質量というのは、最初の実験のころで5kgなんですね、リフレクターの問題とかいろいろ態様がありますが。だから、もちろん、非分裂性も含めた総プルトニウムでいきますと、長崎型であれば7kgとかそれぐらいになってくると思うんですが、原子力安全委員長にお聞きした方がいいんだったら、どうぞ答えていただいたら。

鈴木篤之・原子力安全委員会委員長:
 先生がおっしゃるとおりが大体正しいところではないかと思いますが、正確には、いろいろな前提を立てて評価しなきゃいけませんのでなかなか難しいところですが、私が理解しておりますのは、先生お尋ねの、核不拡散上といいますか、核兵器との関連では、私の理解しているところでは通常8kgを一つの判断の目安にし、その約二分の一、4kgぐらいだと、ひょっとするとそれでも十分かもしれない、そういう議論になっているんじゃないかと思います。
 ありがとうございました。

日本共産党・吉井英勝:
 それで、アメリカの開発史について述べたものの中では、最初に実験したのは、リフレクターその他のプルトニウムの密度もかかわってきますから簡単には言えませんが、5kgでやったということですね。
 つまり、日本の現在持っている分裂性プルトニウム、これは原発から出てくる分だけですが、今持っている分で26.2トンですから、これは大体、長崎型原爆に直せば、計算はいろいろありますけれども、5,300発分ぐらいといいますか、かなりのものになってこようかと思いますが、これは単純計算の話ですから、確認しておきます。いずれでも結構です。

鈴木篤之・原子力安全委員会委員長:
 計算上はそういうことになろうかと思います。

日本共産党・吉井英勝:
 それで、現在そういう状況なんですが、原子炉の中と貯蔵プール、六ケ所中間貯蔵施設にある使用済み核燃料に含まれている分裂性のプルトニウムというのが、これも既に電事連データでいただいておりますが、79.9トンですね。ですから、これだけでも単純計算すれば16,000発のプルトニウム原爆の量に相当してくる。ですから、再処理を済ませたプルトニウム保有量と合わせますと、日本には、長崎型原爆にすれば21,000発分を超えるぐらいのプルトニウムを持っている、非常にたくさんのプルトニウムを持っているというのが日本の現実だということをまず見ておく必要があると思います。
 日本にはこれだけの核兵器開発の材料であるプルトニウム保有量があって、六ケ所再処理工場でプルトニウムの大量生産能力が今現実に稼働を始めようとしております。それから、核を扱う高い技術力があります。多くの核技術者も日本には存在しているのが現実です。
 そこで、外務省の方に伺っておきたいんですが、1969年9月25日、「わが国の外交政策大綱」というのを外交政策企画委員会の方でまとめた報告書があり、これは先日届けていただいております。この中で、「当面核兵器保有しない政策をとるが、核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルは常に保持するとともにこれに対する掣肘をうけないよう配慮する。」これが外務省が当時出しておられた日本の核政策についての考え方だと思うんですが、まず、外務省の検討文書であることは間違いないですね。

長嶺安政・外務省大臣官房審議官:
 お答えいたします。
 ただいま委員御指摘になりました文書でございますけれども、これは、外交政策企画立案機能の強化ということを目的として、自由な見地から総合的に重要外交課題に関する審議を行うために設置されました当時の外交政策企画委員会が、昭和44年、1969年5月から9月まで行った検討作業を取りまとめたもの、「わが国の外交政策大綱」、こういう文書であるというふうに承知しております。

日本共産党・吉井英勝:
 私、核兵器について、この「当面」という言葉がなかなか意味を持っているのかなと。つまり、当面は核兵器保有しない政策をとる、しかし将来的には保有するかもしれないという含みがあったのかなと思うんです。
 実は先ほどの麻生大臣の本会議答弁を私聞いていまして、我が国が核兵器を直ちに保有することはしないと、外務大臣は、直ちにという言葉をつけているんですね。日本が永久に核兵器保有しないということじゃなくて、直ちにと。当時から外務省の方で検討していたのは、当面核兵器保有しない政策をとる、当面というふうに非常に限定的なんですね。
 外務省が言っている「核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルは常に保持する」とした政策、これは、日本が核兵器をつくろうとするのではないかなどと国際的不信を招かない保証は、これは原子力基本法第二条「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り」とし、そこで法律で核兵器開発を否定している。そして、二条の後段で民主、自主、公開の三原則を定めて、原子力の研究開発については国民的監視ができるようにすることで、核兵器開発を秘密裏に行えないようにしているということが法律で明確に核兵器開発を禁止していることだと私は思うんですが、この点は官房長官にちょっと伺っておきたいと思います。

塩崎恭久内閣官房長官
 今御指摘の原子力基本法でございますけれども、我が国の原子力活動というのは平和目的に限定しているということでありますので、今御指摘の点は正しいというふうに思います。

日本共産党・吉井英勝:
 だから、法律上、日本は核兵器開発しないということをきちっと決めているわけですね。しかし一方、外務省の文書では、当時、当面核兵器保有しない政策をとっていく、当面のことですから限定的にですね。将来はわからない。先ほどの麻生大臣の答弁というのは、我が国は核兵器を直ちに保有することはない、直ちにと。だから、当面とか直ちにという限定をつけているんですね。
 そこで、大臣、確認しておきたいんですけれども、法律によって日本は核兵器開発を禁止しているわけですから、これは限定つきのものじゃないというのが政府のあるいは日本としての明確な立場ですね。

塩崎恭久内閣官房長官
 日本は法治国家でありますから、法律にのっとって国家は回っていくということだと思います。

日本共産党・吉井英勝:
 ここは外務委員会じゃありませんから、外務大臣がいないところでこれ以上外務大臣の発言についてはおいておきますけれども、しかし、外務省はそういう文書を出し、外務大臣は先ほどの答弁でも直ちにと限定つきであるということは、私は、これは日本の核開発の問題について、非常に国民の皆さんからも、場合によっては国際的にもこれは不信を招くことになってしまうということは言わなきゃならぬと思います。
 それで、この点では、専守防衛のためであれ、自衛権の行使であれ、侵略のためであれ、小型であれ、戦術核兵器であれ、核兵器開発そのものを日本は禁止しているということは明確だと思うんですが、官房長官、それはもう明確ですね。

塩崎恭久内閣官房長官
 原子力基本法核兵器保有しないということを唱えているということですね。それはそのとおりでございます。

日本共産党・吉井英勝:
 次に、核防条約第二条により、非核保有国として一切の核兵器は持ってはいけない、したがいまして、もし日本が小型であれ大型であれ核兵器を持てば条約違反になることになって、ひいては憲法98条第2項違反になる、これは1978年の真田秀夫内閣法制局長官の答弁ですが、非核三原則というのが、政府の方針ということだけじゃなしに、今お答えになられたように、法律と批准した国際条約によってもはっきりしているものだ、こういうことでいいですね。官房長官に確認します。

塩崎恭久内閣官房長官
 御指摘のとおり、我が国の原子力政策というのは、非核三原則というのは政策としてしっかりあるわけで、これは不変のものだということは安倍総理も何度も確認をしているところでございますが、今御指摘の原子力基本法、これによって平和目的に限定した原子力活動しかできないということがまず書いてあって、法律的に拘束力を持っているわけであります。そして、NPT、核兵器不拡散条約、これは批准をされているわけでありますから、このもとで非核兵器国として核兵器の製造や取得等は行わない義務を負っているということはバインディングであることは明らかでございます。
 先ほど外務省の古い文書のお話がありましたけれども、我が国は国会で成立をいたしました法律あるいは批准された条約に拘束をされるということでありますので、外務省の文書でどう表現されようともそれはそのときのことであって、法律と条約が意味がある、こういうことでございます。

日本共産党・吉井英勝:
 ところが、中川昭一政調会長や麻生外務大臣らが、憲法でも核保有については禁止されていませんとか核保有の議論は結構だなどという発言がどんどん繰り返されるわけですね。それから官房副長官時代の安倍総理自身も、2002年5月13日の早稲田大学での講演では、憲法上は原子爆弾だって問題はないですからね、憲法上は、小型であればですねと発言しているわけですね。だから、一貫して政治家の核開発発言が繰り返されているわけですが、なぜこういう、いわばはっきりしているはずのことが繰り返されるのか。
 その背景には、核兵器開発は法律で禁止している、国際条約上も禁止しているんです、日本も批准したわけですが、政府見解で、「自衛のための必要最小限度を超えない実力を保持することは憲法第9条第2項によっても禁止されておらず、したがって、右の限度の範囲内にとどまるものである限り、核兵器であると通常兵器であるとを問わず、これを保有することは同項の禁ずるところではない」という、これまた1978年3月11日ですが、真田秀夫内閣法制局長官答弁を初めとして、これは1958年ごろでしたか、岸総理の当時の答弁にも類似のものが出てまいりますが、やはり、9条の2項によっても持ち得るんだ、こういうことを言い続けてきたことが繰り返し繰り返しこういう議論が出ている根底にあると思うんですよ。
 専守防衛のためであれ、自衛権の行使であれ、侵略のためであれ、小型であれ、戦術核であれ、核兵器開発そのものは日本は法律で禁止しているんだ、そこははっきりしているわけですから、9条2項で言っている、「自衛のための必要最小限度を超えない実力」とする政府見解ですけれども、その実力の中には核兵器は含まれないんだということを政府として明確にしておれば、そもそもこういう議論というのは出てこないと思うんですが、官房長官、これはどうなんですか。

塩崎恭久内閣官房長官
 先ほど来、憲法9条2項に基づいても、小型であれば持ち得るかどうかという議論が提起されているわけでありますけれども、純粋法理論的にいけばそういうこともあり得るということを一般的に言っているわけであって、繰り返し申し上げますけれども、安倍総理は、非核三原則は守り、そして、政府としてこの核開発の問題については議論はしないということを明確にし、また、党でも正式な場での議論はしないということを言っているわけでございます。
 したがって、政府としては、そういう方針を堅持するということを申し上げるのみでありまして、それ以上でも以下でもないということであります。

日本共産党・吉井英勝:
 私は、なぜこういう議論が出てくるのか、全く政治家でないだれかが言うような話じゃないんですね。
 それで、そういう議論が出てくる根底には、法律上も、批准した条約上もそうだし、政府の非核三原則によっても核兵器を禁止しているわけですね。法律上禁止している。そして、憲法9条2項の方で真田さんのような解釈をしたにしても、法律上禁じられているものについては明確に、それは遊びの話じゃなくて、日本の政府の見解としては、その実力の中には核兵器は含まれないんだ、このことをきちんとすれば、大体、政治家の間からこういう議論が繰り返し繰り返し、憲法上は原子爆弾だって問題でないという安倍さんのかつての発言だって出てくるはずがないんですね。
 これは、このところをやはり、政府見解、法制局長官答弁、政府答弁のこの部分を、実力の中には核兵器も持っていいかのような部分ですね、そこはきちんとしておくということが私は必要だと思うんです。官房長官にもう一度伺います。

塩崎恭久内閣官房長官
 安倍内閣として安倍総理が、憲法9条2項による、いわゆる必要最小限度を超えない実力を保有することを認めている条文からどういうことが読み取れるのかということを特に敷衍しているわけではないと思います。
 大事なことは、今、我が国が核兵器を持たないという政策と法律とそして条約について、これは堅持するということを内閣総理大臣が言っているわけでありますので、他のいろいろな政治家としての発言は、いろいろなところで聞こえてくることではありますけれども、我が国の政府としてそういうことはやらないということは明確であると思います。
 今、憲法9条2項によっても禁止されないものの中に何が入るのかというようなことを政府が今ここで定義をつぶさにするということも、余り意味があることではないと思っております。
 それは、いろいろな議論があって、そして今までの解釈からいけば、通常兵器であろうとも核兵器であろうとも、技術的な進歩によって必要最低限ということはあり得るかもわからないけれども、しかし、それよりも大事なのは、我が国の政府として、どういう政策を持ち、どういう法律を持ち、どういう条約を批准しているのかということが大事なんだろうというふうに思っております。

日本共産党・吉井英勝:
 これは、日本が、長崎型原爆にすれば5,000発を超える、現に持っている、まだ未処理分を含めたら20,000発分を超えるぐらいの原爆製造能力といいますか、プルトニウムの蓄積をしているわけですね。そういう国が国際的にも不信を招くこともなく、そして進んでいくためには、それは、こういう議論が政治家の間から次々と飛び出すということ自体が大きな問題だったんです。
 なぜそういう議論が出てくるかといったら、これは、2002年のあの早稲田大学での、安倍さんも官房副長官の時代だから、本当は立場としては内閣を代表するはずですが、彼は憲法上は原子爆弾だって問題でないと、そこにあるのは、憲法9条2項の真田さんの解釈とかそういうものの上に立っているわけですよ。今、総理大臣になったから、ちょっとランクアップしたから非核三原則だ、そういう話じゃないと思うんですね。
 やはり、そういうことをきちっとやっていくには、私は、きょうあなたがここで約束できないというのであれば、あなたの責任において、この九条二項の必要最小限度の実力には、日本の場合には他の法律その他でもきっちり禁止しているわけですから、核兵器は含まれないんだということを明確にするということを、これは政府としてよく検討した上で、改めてお答えを求めたいというふうに思います。

塩崎恭久内閣官房長官
 今の憲法第9条第2項を解釈したときに、核兵器が入る、入らないの話は、真田さんの解釈とかいうことではなくて、内閣法制局が長年にわたってとってきたスタンスとして、それは理論的にはあり得るということを言っているだけのことであります。
 我が国は、国権の最高機関は国会であって、そこで法律も、そして条約も批准もされ、成立をしているわけでありますから、もし万が一政策を変えるということになれば、法律を変え、条約を破棄しというプロセスを経なきゃいけないわけであって、そのようなことはしないということを明確に安倍内閣総理大臣は言っているわけでありますから、そこのところはもうそれ以上でも以下でもないというふうに思っております。

日本共産党・吉井英勝:
 つくらないということは、もう政策的に方針がきっちりしていると言いながら、しかし、直ちに保有することはしないということは、言外には、直ちにという一定期間が過ぎたらあり得るわけですから、そういう発言が繰り返し繰り返し出てくるということ自体は、やはり発言者に対してきちんとした対処を求めるということは当然のことだと思います。
 しかし、その根底にある、これまで続いてきた法制局長官の答弁とか、あるいは岸さん以来の閣僚の答弁の中に流れているその考え方をきちんと整理しないと、私はこれは続いていくだろうと思います。
 そこをまず正すということを、これは、きょうはもうこれ以上答弁を求めませんが、あなたの方で責任を持って、政府としてきちんとした対応をするように議論をしてもらいたいと改めて伺うようにします。
 時間が大分迫ってまいりましたので、私、政府参考人に聞く予定をしておった話は、確認する質問は先においておいて、原子力安全委員長の方に直接いきます。
 例えば志賀1号で、地すべりで高圧送電線の鉄塔が倒壊した、外部電源の負荷がなくなったから原発がとまったというのがありますね。原発がとまっても機器冷却系が働かなきゃいけませんが、外部電源からとれればそれからも行けるんですが、それも大規模地震のときはとれないわけですね。
 では、内部電源の方はどうなっているかというと、こちらの方は、実際には1999年の志賀1号だとか、1988年の志賀2号とか、1999年二月や九八年十一月の敦賀の事故とか、実際に、バックアップ電源であるディーゼル発電機自身が事故をやって働かなくなった、あるいは、危ないところで見つけはしたけれども、もし大規模地震と遭遇しておれば働かなかったというふうに、配管の切断とか軸がだめになっていたものとかあるわけです。そういう中で、スウェーデンのフォルスマルク原発2号では、バックアップ電源が四系列あるんだけれども、同時に二系列だめになった、こういう事故があったことは御存じのとおりです。
 それで、日本の原発の約6割は、バックアップ電源は三系列、四系列じゃなくて二系列なんですね、6割は。そうすると、大規模地震等によって原発事故が起こったときに、本体が何とかもったとしても機器冷却系に、津波の方は何とかクリアできて、津波の話はことしの春やりましたけれどもクリアできたとしても、送電鉄塔の倒壊、あるいは外部電源が得られない中で内部電源も、海外で見られるように、事故に遭遇した場合、ディーゼル発電機もバッテリーも働かなくなったときに機器冷却系などが働かなくなるという問題が出てきますね。このときに原子炉はどういうことになっていくのか、この点についての原子力安全委員長の予測というものをお聞きしておきたいと思うんです。
 それが一点と、もう一点は、機器冷却系が働かないと当然、崩壊熱の除去ができませんから、崩壊熱除去ができないことになったときに、核燃料棒のバーンアウトの問題、これは海外でそういう例もありますけれども、こちらの方はどうなっていくのかという原子炉の安全にかかわる問題について、この場合、どのように想定して、そして審査を進めておられるか、これを伺います。

鈴木篤之・原子力安全委員会委員長:
 ありがとうございます。
 最初の点でございますが、いろいろな事態がもちろんあり得ると思っていまして、ただ、そういう事態になったとしてもできるだけ、先生が御心配のように、炉心が深刻な事態にならないようにというのが我々がとっている方針でありまして、そういう意味では、例えば非常用ディーゼルが万一動かなくなったという場合には、さらに直流のバッテリーを用意するとか……(吉井委員「いや、フォルスの方はそれもだめでしたからね、二系列」と呼ぶ)フォルスマルクの場合は四系列の二系列がさらにだめになったということですね。(吉井委員「バッテリーもだめでしたから」と呼ぶ)はい、二系列ですね。
 したがって、同じバックアップを多重に持つということと、多様に持つ、つまり、ディーゼルだけじゃなくて直流も持つとか、それからそれぞれを複数持つとか、そういう考え方をまず審査の段階で、設計の段階で確認しております。
 地震等においてさらにそういうものが使えなくなるという事態に対しては、もう一つは、私どもとしては、アクシデントマネジメント、非常事態における管理ということで、日本の場合は同じサイトに複数のプラントがあることが多いので、ほかのプラントと融通するとか、そういうような非常に多角的な対応を今事業者に求めているところでございます。
 それで、先生お尋ねの、そういう事態になったときにバーンアウト等で燃料が破損する、放射能が外部に放出されるというような事態に対してどう考えているかというお話でございますが、これにつきましては、まず、そういう事態になったときに大きな事故に至らないかどうかを設計の段階、最初の基本設計段階で安全評価をして、安全評価の結果、そういう事態に至らないようにまず確認するというのが一番の基本でございます。
 と同時に、しかし、さらに非常に、通常はあり得なくても理論的にはあり得るという事態に対してどう考えるかでございますが、これについては私ども、最近、耐震安全に係る指針を改定いたしました。そういうことで、さらに耐震設計を基本的には厳しくしていきたい、こう考えておりますが、そういう中でも、さらに、残余のリスクと称しておりますけれども、そういうような基準をさらに超えるような大変大きな地震が来たときには、では、どうなのかということも、これは事業者に、そういうことも評価してください、評価した結果、そういうことがまず起こらないことを数字で確認するか何らかの方法で確認してください、そういう方針で今考えております。
 ありがとうございました。

日本共産党・吉井英勝:
 時間になりましたから終わりますけれども、私が言いましたのは、要するに、フォルスマルク原発の場合も、ディーゼルとそれからバッテリーと両方一系列なんですよ。これは四系列あるうちの二系列がだめになったんです。外部電源もだめですから、ほかのところから引っ張ってくるというのも、もともとだめなんです。ですから、そういう場合にどういうふうに事故は発展していくものかということをやはり想定したことを考えておかないと、それは想定していらっしゃらないということが今のお話ではわかりましたので。
 あわせて、バーンアウトという問題は非常に深刻です、燃料棒自体が溶けてしまうわけですから。これについては海外でチェルノブイリその他にも例があるわけですから、バーンアウトというのは深刻な問題だということで、原子力安全審査というのはまだ発展途上といいますか、この例を言ったら、事務方の方はそれはまだ想定していませんというお話でしたから、きちんとこういうことを想定したものをやらない限り、原子力の安全というのは大丈夫とは言えないものだ、それが現実だということを指摘して、時間が参りましたので、また次の機会に質問したいと思います。
 終わります。