娘が入院中に夢にまで見たという京橋の「京すし」へ鮨を喰いに行く。今年も月に一回、昼の鮨を生き甲斐に暮らしていくことになりそうな予感がある。3月のパーティーのことで話は持ちきりで、あの2週間はみんな仕事が手につかない状況のようである。
京橋から銀座に向かっていこうとすると、鍛冶橋通りのところで、歩道に妙な人だかりができていて、どうも不思議だと思ってよくよく目を懲らしてみると、そうそう、そのあたりはmeijiのチョコレート・ショップがあるところ。この時期になると外にまで机を持ち出して積極販売。通りかかる女性達が群がってチョコレートを買っているのだった。そういえばそういう風習から縁がなくなってもう何年も経つ。最近はテレビや雑誌でも「バランタインだからって何もチョコじゃなくても良いんだよ、その証拠に海外に行くとチョコレートを上げる習慣なんて見ないよ」という風潮が拡がりつつある。何もチョコレート屋だけの特権にしておくこたぁない、こっちのものも買ってよという、いってみればセールス・プロモーション合戦だっつうだけだ。
銀座の表通りをのんびりのんびりと散歩をしていると、風を避けることができてぽかぽかと暖かい。平日の午後だというのに、結構な人の流れができている。そろそろ次世代が出るといわれているものだから、今のうちにちょっとiPadに触っていこうと思ってApple Storeに顔を突っ込む。触っている横で、どう見ても70代後半と覚しき紳士に下手をすればひ孫かと見まごうばかりの若い店員が懇切丁寧に説明をしている。あのお客さんが一体どこまでiPadを理解しているのだろうかと心配になるというものだけれど、ちゃんとバッテリーはどれほど持つのか、それは混みになっているのかと質問されている。解説する方も大変だけれど、失礼ながら、この歳でiPadに挑戦しようという意欲を持っているということだけでも素晴らしいことだと、舌を巻いた。負けちゃいられない。
教文館で週刊金曜日、二週間分を買って、日比谷線で六本木へ向かう。クリント・イーストウッドの映画「J. Edgar」を見ようというわけだ。近頃良くあるようにこの映画も東宝系だけが配給しているわけじゃなくて、丸の内ピカデリーでもやっているのだけれど、こっちは時間が合わなくて、六本木にした。映画が始まるまでに半時間ほど時間があったので、珍しく毛利庭園まで降りて見ると、センリョウの実が赤く、そしてロウバイが咲いて良い匂いをさせていた。
「J. Edgar」は138分と2時間を超える映画で、ディカプリオがFBI長官のJohn Edgar Hooverに扮して死ぬまでを演じている。彼の演説といっても良い強烈な主張を聞いていると、後ろからクリント・イーストウッドが自分の考えでもいっているんじゃないかという気にもさせられる。この映画を見ると先日のスーパー・ボウルのコマーシャルに出てきたクリント・イーストウッドがわかるような気がするのだ。Hooverが48年間もFBIを牛耳ってきたことを改めて認識するとアメリカという国がますます魑魅魍魎の国だという印象を深く持つ。それに比べるとわが国の魑魅魍魎たちはまだ単純且つ見え見えだという気がする。
平日の午後3時半からの上映とあってか、ガラガラだ。ガラガラどころじゃない、後ろでやたら大きい声で本編が始まる寸前まで、そしてエンドロールになるやいなや喋るバカなおばさん二人が特定できるほどしか人が入っていない。入っているのは千円で入っていると覚しき、私と同じシニア年齢の爺さん婆さんばかりだ。こんな時間だったら昔は学生がいてもおかしくなかったような気がするんだけれど、彼らはこんな映画を見やしないってことか。それとも入場料が外国に較べて高いからなのか・・・。
映画が終わって出てくるとさすがに金曜日の六本木ヒルズだけ合って、映画館のロビーには待ち合わせている若者達が増えてはいる。
私達は市ヶ谷の親戚のお好み焼き屋に寄って行こうというので、南北線に乗ろうと六本木一丁目までだらだらと久しぶりに坂を下ろうじゃないかと歩き始めたら直ぐに「クローバー」の店が真っ暗になっている。どうなったのかと見ると先月いっぱいで閉店したと書いてある。建物の周りはもうすっかり何もなくなっていて、どうやらこの建物も潰して大きなビルになりそうな気配だ。こうして年がら年中工事をしては大きなビルに集約されていく。そんなに需要があるということなのか。オフィスも何もどんどんみんな都会に集中してきて、他は閑古鳥というのがこの国のやり方、の様だ。そういえばもう随分永いことチーズケーキなんて食べないなぁ。
約10時間の散歩。しかし、歩いていたのは僅かに7000歩ほど。