ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

「思想の科学」

 随分前のことだけれど、まだ母校の某学部にお手伝いに行っていた頃、図書館から廃棄本が出た。こんな事は年に1-2回あったんで珍しいことでもなくて、今でもそんなチャンスがあるのだろう。
 卒業生だからもらいに行っても良いかと聞いたことがあるんだけれど、そんなことをまともに聴くバカはいないってことだったかも知れないが、図書館の担当者はお断りしますといった。どうせ捨てる本なんだから誰にでもあげるといったら良いと思うのだけれど、今現在学校に在籍している人に限らせて貰うというのが図書館の説明だった。しかし、これは説得力が全くない。廃棄するんだろう?要らないんだろう?だったら欲しいという人がいたらあげればいいじゃないか。それでも欲しいという人がいなかったらどうするのかといえば、本当に塵芥として廃棄するのではないのか?うちの近所の図書館のように格安で売ることにして、その上がりをどこかに寄付でもしたらいいのに。
 ま、そんな話は別にして、そんなときに、段ボールひと箱分の「思想の科学」が出たことがある。一年分を合冊にしてある。それを臆面もなく私はひしと胸に抱き上げて持ち帰ってきた。なぁに、今の学生が「思想の科学」を前にして目を大きく見開き鼓動を高鳴らせるかといったら全くそんなことがあるわけがない。いや、そんなに断定するのは如何かということかも知れないが。
 ところが当時の雑誌の活字は実に小さい。なまじな老眼鏡による支援を得たくらいでは頑としてわが方のチャレンジを退けんというくらいのものである。そこで私は考えたのだ。そうだ、これを自炊してしまえばよいのだ。これをpdf化すればモニター上で拡大して読めば絶対に大丈夫ではないか。これから古い「思想の科学」を全部自炊してしまうつもりである。楽しみだ。

 とりあえず第四次思想の科学中央公論社版) - 1959年の12冊から始める。まず合本になっているものをばらす。これは12冊に3カ所錐で通し穴を開け、そこに麻紐を通してこれ以上ないというくらいに絞めてある。これはナイフでぷつんと切ってしまえばよい。そのあとは厚い表紙と背表紙をはがす。それから背中の堅牢なるのりで貼ってあるメッシュをベリベリとはがす。そして一号ずつばらす。気がつくと紙は黄色くなっていて、もうしばらく時間がたったらパリパリと割れてきてしまいそうである。当時の紙が上質なわけがない。これを一枚一枚上手くはがすのに労力と手間が掛かる。
 この年、2月号と3月号に上坂冬子の「職場の群像」が掲載されている。これが彼女のデビュー作である。