優先席が空いていたので座った。最近は優先席に座るようにしている。普通の席に座ると若い人が座る場所を横取りしているようなことになるからと思ってね。
隣にいた青年が自分の横に置いた鞄の中に手を突っ込んでなんだかカサカサとまるで何かを削っているような音をさせている。
そのうちに取り出したのは、無印良品で売っているようなわら半紙を閉じたノートのようなもので、そこに一面にボールペンで試し書きのようなものが描かれていて、そこにまた上書きをしている。面白いことをしているなぁと思ったけれど、多分それが彼のこだわりなんだろうと思うあたりから、ひょっとすると彼は自閉症的な人かも知れないなぁと思う。
彼が上野で降りてもうかれのことは忘れていたんだけれど、地元に帰ってきてバス停に向かって歩き始めたら、彼が目の前を歩いていた。世の中は狭い。それとも彼の行動半径が狭いのか。
