ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

偽装請負

 今朝の朝日新聞が「偽装請負」に関する記事を一面トップに持ってきているだけでなく、中の頁で解説をしている。そもそも労働者派遣法が改定されて製造業の生産ラインにも労働者を派遣することができる様になった時に、ついにここまで来たかと経済団体の要望にいつもマメに対応する与党の活動が功を奏したことを知った。しかし、実は物事はそんなに簡単ではなくて、派遣労働者を一定期間以上継続して契約するとその企業はその派遣社員を正社員として雇用しなくてはならないという、たまには労働者にとってプラスになる法も作ることができるんだと感心する(もっともそれが当たり前だけれども)制度なのであった。
 企業はそんなことをしたらどんどん人件費が上がってしまうから、自社工場内の生産ラインを一括請負契約に出す。つまり明確にいえば「下請け企業」にラインを丸投げする。これは法律通りにするならば、その下請け企業が労働管理も生産管理もやって、製造された製品をそのメーカーに納めるということである。しかし、「請負契約」ではあるけれども実際は労働管理も、生産管理もその発注者の社員が行い、自社の社員と同じ扱いで労働させる。これを「偽装請負」と表現する。大手のメーカーのラインは、相当数がこうした方式で動いている。そうでなくてはあれだけの日系人をふくむ外国人労働者企業城下町で暮らせるわけがない。
 ものが安く買える様になる裏にはなにかがあって当たり前で、それを当たり前として終わらせることがそのまま搾取行為に繋がっているのであるし、アンフェア・トレイドに荷担しているわけだし、こうした行為で企業は儲かるかも知れないけれど、多くの人が恩恵にあずかる様に見えていながら実は餌食になっているだけ。労働者も消費者であり、彼らの購買力を制限するということは企業が自らの首を自ら絞めることと同じ。偽装派遣契約のもとで働いている労働者は組合なんてものを組織する力も余裕もない。それでなくても組織率の低い労働組合だけれども、組織化可能な労働者数が減少する。こうなるといつまでも財界の言いなりでダラ幹でつとまった連合も、本当に生き残る積もりがあるのであれば(もうどうでもいいやと思っているのかも知れないが)、この辺を守っていかなかったら存在意義がない。
 介護の現場に外国人労働者を入れるといっているけれど、それでなくても20代の若者が結婚もできない、自力で暮らすことのできない程度の介護報酬しか出せない業界にどうせ裏の就労システムを駆使する様な導入しかできないのだろうから罪の拡大の様なアイディアである。既に何年も前からこうした法改正を見越して東南アジアには日本向けの介護職教育をやろうとしている訓練校が存在しているという。人手のかかる職種は高くつくのは当たり前だという理解が必要なはずである。それを前提に、ならばその運営をどうするかという議論があるはずで、保険のシステムをこうしたから、その結果として介護報酬をここまで貶めないと成り立たないという議論は本来的におかしい。2000年の社会福祉構造改革とはやっぱり弱者斬り捨て改革であったことをこの際はっきりしておかなくてはならない。金持ちが作る仕組みなんだから、その視点からしか作られないんだろうなぁ、やっぱり。