ほぼ足りてまだ欲 その先

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失業率の比較

[写真は記事の内容とは全く関係がありません。]
 日本の失業率は(例えば豪州の失業率に比べて)低く出る。それは日本が恒常的に失業率が低いのかといえば、決してそんなことはない。毎回テレビや新聞で各国の失業率が比較されるとき、日本の失業率が低く出るので、日本の労働市場は他国に比べて管理が巧くできているのだ、という認識を持っている人がいたら、それは間違っている。尤も失業率の比較を提示するときに毎回これを注釈しないのも間違っている。
 日本の場合、普通引用される「失業率」は統計局が発表する労働力調査に出てくる数字をいう。統計局はメルマガを発信しているので、登録しておくと自動的に入手が可能である。一番至近な発表数字は先月の末のもので、こう書かれている。

労働力調査 平成21年2月分(基本集計)

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  • 2月の就業者数は6265万人と1年前に比べ27万人減少
    • 就業者数は13か月連続の減少
    • 就業者のうち休業者数は145万人と,1年前に比べ19万人増加
    • 主な産業別就業者数は,1年前に比べ「建設業」,「製造業」などが減少,「医療,福祉」などが増加
  • 2月の完全失業者数は299万人と,勤め先や事業の都合による者が増加したことから,1年前に比べ33万人増加
    • 完全失業者数は4か月連続の増加
  • 2月の完全失業率は季節調整値で4.4%となり,前月に比べ0.3ポイント上昇
    • 男性は4.4%と,前月に比べ0.2ポイント上昇
    • 女性は4.4%と,前月に比べ0.3ポイント上昇

 母数となる「労働人口」には今現在仕事を探している人+就労人口を持ってくる。
 そこに表す数字にはそれぞれの定義があって正確を期すと

全国全世帯の中から、無作為に選定した約10万人の15才以上の人に対し、調査票を配布しています。

  • 「調査期間中に少しでも仕事をしたか、しなかったか」
    • した → 従業者(調査期間中に収入のある仕事を1時間以上した人)
    • しなかった → 完全失業者 or 休業者 or  非労働力人口

完全失業者とは以下の3条件を満たす人です

  1. 仕事がなくて調査期間中に仕事をしなかった
  2. 仕事が見つかればすぐに就職できる
  3. 調査期間中に仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた

 つまり、ただ単に仕事をしていないのではなくて求職活動をしているという事実が必要です。職業安定所ハローワーク)に登録していなくてもかまいません。ちなみに「休業者」とは休暇中、病気療養中だった人、「非労働力人口」とは学生、専業主婦、高齢者が含まれています。
 前述の「従業者」と「休業者」を合わせたものが「就業者」です。
その「就業者」と「完全失業者」を合わせたものを「労働力人口」といいます。(こちらから引用)

 ということになる。つまり日本の場合、期間中に一時間でも何かのアルバイトやった人は就労者だと出てしまう。
 ところが豪州の失業率はその時、全ての人を「労働力人口」としてカウントするために「休業者」数が日本の場合よりも増加する。従って分子が大きくなる。
 だから、それぞれから出てきた数字をそのまま比べても意味を持たない。豪州の場合は豪州統計局が発表するが、その数字と日本の統計局の数字をそのまま比較すると常に日本の完全失業率の方が低く出る。
 この計算根拠の違いについては10年ほど前にどこかでレクチャーを受けていたのだけれど、その引用元を失ってしまって確認ができないでいた。今になってネット上で検索してみるとあっという間に解明できる。それだけ関心が高まってきたということかも知れない。