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豪州総選挙

 今週の土曜日、つまり明後日は豪州の総選挙である。豪州の選挙では棄権をすると罰金が科せられる。だから、投票率は95%前後とほとんどの有権者が投票する。国外にいても当日大使館、領事館党の政府機関にパスポートを持っていけば投票をすることができる。福岡ドームで全日本と強化試合を戦っている全豪州の野球チームは一体どこで投票するのか知らないけれど。そんなことをしたら二重投票する奴がいるんじゃないのかと質問したら、そんな数は非常に少ないはずでnegligibleだろうと答えたオージーがいたけれど、実際のところそんな感覚なのかもしれないし、この感覚がとてもオージーらしくて笑う。一昨日、珍しくも朝日新聞(2007年11月20日01時15分)が豪州総選挙を記事にしていたが、そこでも選挙前の世論調査で伝えられている野党の労働党自由党・国民党の連立与党をリードしているという状況を告げていた。
 ジョン・ハワードを首相とする保守連立政権がそれまでの労働党政権に交代したのは1996年のことで、それ以来ジョン・ハワードは政権を維持してきた。2000年のオリンピックを挟んで、豪州の経済は右肩上がりで推移してきたし、その後の中国の台頭に合わせて鉱山資源が絶好調を迎えてきたわけで、保守連立政権が「いったい誰がこれほどの経済的発展を実現できたというのか」というキャンペーンに繋がるわけだ。しかし、その裏側にはとびきりの住宅バブルでより苦しくなった層もあるし、日本以上に経済格差が生じてきていることも確かだろう。その点では各種の世論調査労働党の方が有利だという結果が出るのも理解できるといえる。ここまできて意外とその差は縮まっていると色が付いているとはいえフェアファックスが反労働党キャンペーンを張る。
 これまでの11年間、労働党は次から次にリーダーが入れ替わりほとんど落ち着く閑がなかったといって良いだろう。その上ジョン・ハワードの積極的な保守政策が時代のツボにはまったこともあって労働党は圧倒的に不利だった。ジョン・ハワードにとってやはりそのかげりを見せ始めたのはイラクが原因だったといっても良いだろう。豪州はこれまで第一次世界大戦以来あらゆる戦争に派兵してきた。勿論イラクにも派兵している。イラクに軍を派遣して犠牲者が出ていないのは日本と豪州だけではないだろうか。それでもブッシュへの傾倒は国内の反発を増やしている。11年間に亘って政権を握り、後継者に譲るだろうと思われていたのに、未だに政権を握り続ける意思を見せる68歳のジョン・ハワードに対して50歳の労働党ケビン・ラッド党首に期待する市民層が力を見せることができるだろうか。
 豪州の選挙の方法は自分が投票する候補者が上位に残れない時には誰に投票するかという意思をも示す方法であるので、開票時に過半数票を獲得する候補者が出ればそれで確定するけれど、そうでないともう一度票を割り振り直す部分ができるので、日本のように単純な開票ではない*1。しかし、このやり方は日本の単純な選挙よりは意味があると思われる。自民党政権が続くとこんな方法をとろうとするフェアな選挙制度に移行するわけはない。こんなことひとつをとっても日本の民主政治が未だにプリミティブな様子がよく分かる。
 ここまで来て豪州総選挙もバタバタしてきていて、ネット上にジョン・ハワードが持っているシドニーの家が売りに出されたという嘘情報が流れたり、シドニーの西にある選挙区で自由党候補陣営が労働党候補者のニセちらし配布事件が露見したりして泥仕合の様相を見せているらしく、新聞をネット上で読むと面白い。今日のNHKラジオ深夜便のワールドネットワークがメルボルンの杉本良夫だったらおもしろいのだけれど、残念ながら今日はカイロだった。
 昨日日本は北京オリンピックへサッカーのU22が出場を決めたけれど、豪州のU22はくそ寒い平壌北朝鮮と1-1で引き分け、やはり北京オリンピックへの出場を決めたそうだ。

*1:豪州の総選挙方法:投票者は自分の選挙区のすべての候補者に優先順位を付けて投票するという点である。第1順位票で過半数を獲得した候補者がいればその候補者が当選するが、いない場合は、第1順位の得票が最少の候補者の得票を、投票者の指定した優先順位に従って他の候補者に配分し、いずれかの候補者が過半数を獲得するまでこれを繰り返す。出典:自治体国際フォーラムこちら