ほぼ足りてまだ欲 その先

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静岡空港

 牧ノ原台地にできた「富士山静岡空港(IATA:FSZ)」が今日開港したんだそうだ。何も静岡にまで飛行場なんて造らなくても良いじゃないか、とすぐにいわれそうだし、「富士山」といったって静岡県の中で見ると結構富士山から離れている。様々な議論が百出した空港だけれど、県知事が首をかけ、挙げ句の果てに本当に県知事の首と引き替えに開港したという曰く付きの空港だ。それにしても浪花節な話だ。
 この中途半端な位置にある飛行場からどこに向かって飛んでいくのかというのは大層問題のようだ。

  • 国際線は大韓航空とアシアナがソウルに各一往復。中国東方航空が上海に、月・水・金・日に一往復。
  • 国内線は全日空が沖縄に一往復、新千歳へ一往復、JALが新千歳へ一往復、福岡へ三往復。そして7月23日からはFDA(フジ・ドリーム・エアーラインズ)が開業・就航して鹿児島、熊本に各一往復、小松に二往復飛ばすという。


 今まで聴いたことのないこの航空会社は清水の老舗企業、元はといえば廻船問屋の「鈴与」の100%子会社。サッカーの清水エスパルズの出資社のひとつで静甲地区を中心に他分野展開をしている。特に清水に行ったら鈴与といえば泣く子も黙る伝統企業。とうとう鈴与も飛行機を飛ばすまでになったということだ。自前の職員の養成がようやく実を結んで開港には間に合わなかったけれど、7月開業に至ったと発表している。
 新聞記事によるとこの航空会社には静岡銀行日本政策投資銀行が(多分)幹事会社となって合計13の金融会社がシンジケート・ローンを組んで85億円を融資しているのだそうで(最終返済日は平成26年5月)、この富士山静岡空港を取り巻く状況はいわば全県背水の陣プロジェクトの様相を呈している。
 FDAのこれまでの発表によるととりあえず開業当初は二機のブラジル・エンブラエル社の小型ジェット(76人乗り)をそれぞれ赤とスカイブルーに塗り、3年後には整備される予定の5機を全て異なるカラーに塗るという。
 しかし、本当に当初目論見の搭乗率65%なんて実現できるというのだろうか。韓国・上海からの観光客を対象とした現地旅行代理店のツアーがやってくるのだろうか。ずっと赤字を垂れ流すことになるのではないだろうか。これが鈴与の本体をむしばみはじめるのではないのだろうか。人ごとながら不安が一杯だ。
 朝日新聞は「静岡空港から夢はばたけ(2009年6月1日9時2分)」なんてエールを送っているけれど、時事通信によれば「新型インフルエンザ感染拡大の影響で、6月の海外定期便の一部で欠航が決ま(2009/06/04-10:38)」ったそうで、なんともさい先の悪い話ではあるが、地元の静岡新聞によれば「(初日の今日は)台湾(台北)、香港、マカオへのチャーター便の計22便が発着する(06/03 08:21)」そうでご祝儀相場は上々のようだ。しかし、建設費1900億円の重しは大きそうだ。
 こうなると静岡県民は成田や中部国際空港に行かずにソウルでトランジットで海外に飛ぶことを考えるということになるのだろうけれど、地元企業以外の、大手国内のツアー会社がこのコースを扱うのはなかなか難しいことがある。そうすると安いツアーに参加しようとすると結局やっぱり成田かセントレアに行くことになって、海外旅行に行く県民の数の割にはあんまり利用者数は増えないだろうという読みにはならないのだろうか。
 25年前の計画時の需要予測なんて役に立つのだろうか。まさか、バブルに浮かれた当時の計画のままでは、いくらなんでもないのだろうけれど。


(追記:090606:二日目にして濃霧のために欠航や遅れ相次ぐ。「今秋の完全運用開始まで、着陸を電波で誘導する装置が使えなくなっており、荒天への対応力が懸念されていた。ただ「山の中にあるため、霧が出ることが多い」と立地の問題点を指摘する専門家もいる。(中日新聞・静岡2009年6月6日)」