昨日は良く歩いた。全部で15,390歩。概ねいつもの倍だ。どうしてこんなに歩くことができたのかというと、久しぶりに築地にいったので、築地から日比谷まで歩き、そのあと芝公園から出発した反原発デモに参加したからだ。当初の予定ルートが出発直前にコースが短縮されたことが発表されて、余程なにかがあるのかも知れないとは思ったけれど、大したことはなく、目標の東電本社前で声を挙げることもできた。
昨日のデモで特徴的だったのは、マイクを握っている人たちの殆どが結構なお歳の方々だったということだろうか。なにしろ時には「原爆をゆるすまじ(浅田石二作詞、木下航二作曲。昭和29年)」というあのかつて良く聴いた唄まで出てきちゃうんだから。一瞬、あれ?なんだっけと驚いた。
それに引き替え参加者を見渡すと、2週間前のデモに較べると平均年齢は結構若返ったのではないだろうか。とはいえ、先日の高円寺のデモとは較べようもない。しかし、中でも女性の参加者がとても目立つ。それも労働現場で中心になっているようなベテランの方々が一生懸命に大きな声を挙げているのが目につく。その年齢に相当するような男性が少ないのが気になる。偶々隣り合ったその年代と思える男性が、高円寺が若すぎて参ったからこっちに来たといっておられたけれど、そういう意味ではとても地道でしっかりしたデモであるのではないかという気がする。ただ、リードする態勢に歩いている人たちの中からも不満の声が出ているのは気にしておく必要がある。もっと大きな声を挙げたいという気持ちが溢れている。
デモ出発前に福島から来られた人たち、チェルノブイリから来られた方たちのアピールがあって、最後に決議文を読み上げて出発した。
会場から出発するだけで20〜30分以上はかかっただろうか。出てみてびっくりしたのは、警官隊のその数だ。御成門の駅から歩いてくる間に駐車している警官隊のバスの数が前回の倍以上だったのだから当然なんだろうし、公園に入ろうとするところで4〜50人に及ぶ私服警察官と覚しき人たちの姿を見て、警戒する側がかなり力を割いていることは想像がついた。
私服警官というのはなんでわかるのかというと、概ねマスクをして、とても身軽な格好をしているのだけれど、時としてメモをしたり、ビデオをまわしていたりしている。何よりも普通の人と違うのは瞬間的に行動できそうな雰囲気、そしてやっぱりその目つきにある。これは隠しようがない。普通の人の眼は平安の中にいる。しかし、彼等の眼は獲物を見付けようとする、見分けようとする目つきである。人と目があっても決してそらすことがないという挑戦的な眼といって良いだろうか。
慈恵医大の前を通っていくのは前回と同じ。ところが外堀通りとの交差点にやってくると、そのまま進んで経産省前に行くのではなくて、右に曲がって新橋の駅を目指す。新橋のガードをくぐったらすぐに左折。土橋を通り過ぎてやけに待たされる。なんだろうと思ったらそのまま一気に東電前に突っ込ませずに分断して通らせるという仕組みだった。
外堀通りを左に曲がるところで、右手に何本もの日の丸が見える。何かと思ったら何人かの在特会が来ていてこれを警官隊がその場に押しとどめている人だかりだった。彼等はとても出力の大きなスピーカーを相変わらず持っていて、私達の「原発要らない!」コールの合間合間に「てめぇらはぁ」とか「コノヤロウ!」という口汚い声が聞こえてくる。原発に賛成するのが右翼という公式がとても理解しにくい。この国を愛しているのではなくて、この国のこれまでのシステムが好きだ、ということなんだろうか。
東電の前にはガードをくぐらないと行かれない。ガードは暗い。その先の明るいところが見えるのだけれど、それがすべて警官隊で埋め尽くされている。東電本社は数え切れないほどの警官達によって守られている。一民間企業を行政機関がこれだけの力を使って守る理由はなんだろうか。その仕組みはなんだろうか。私はここまで来るまで警官が東電を守っていてもそれはなにも不思議なことはないと思っていた、というよりも考えもしなかったのだけれど、よくよく考えて見るとどうしてなのだろうかと不思議でしょうがない。東京電力という会社が警察に助けて欲しいと依頼をしたということなんだろうか。私が危険に晒されたときに行政はこうして助けてくれるのだろうか。
解散場所の日比谷公園に入ってみると、野外音楽堂からは迫力のある音が響いてきて、木洩れ日が綺麗だったのが印象的だ。
そんな風景にちょっと心が停まってすぐに思うのは、福島のあの原発近くではもうそんな気持ちで景色を見られることなんてそう簡単にはできないということだ。ただ、地震に大きくゆられ、津波のあの圧倒的な破壊力でぶち壊されてしまったというだけの話ではない。政府があの地区のこどもたちの放射線量規制を年間20mSvに設定したことの恐ろしさを認識しなくてはならない。「3.8マイクロシーベルト/時は、労働基準法で18歳未満の作業を禁止している「放射線管理区域」(0.6マイクロシーベルト/時以上)の約6倍に相当する線量」だという話を聞いて余計にその恐ろしさを知ったのだ。
追加:masaさんが一緒に歩いておられたとは知りませんでした。よりグレードの高い写真は(こちら)masaさんのブログで。