ほぼ足りてまだ欲 その先

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3号被保険者論

 自民党鴨下一郎が2月24日の衆議院予算委員会で、元3号被保険者の老齢年金受給について質問に立った。まず枝野官房長官に「今の年金制度はボロボロか?」と聞く。鳩山由紀夫前首相が「今の年金制度はボロボロだ」といったということを引っ張って、細川厚労大臣にも「今の年金制度はボロボロか?」と聞く。ボロボロにしたのは誰だ?
 このひと言で国民が「あぁ、年金制度はボロボロなんだ」と受け止めることになってしまったんだという。ボロボロにしたのは誰だ?
 ボロボロであることには間違いはないだろう。なにしろ厚生年金の保険料を支払わないやり方を社会保険事務所がリードしたりしてきたのをそのままにしてきたのは一体誰なんだ?保険料回収率を表面上高まったような姑息なやり方を黙認してきたのは誰だ。財政投融資という言葉を使って、積み立ててきた年金制度を大いに無駄遣いをして資産をみるみるうちに減らすことを黙認どころか奨励してきたのは一体誰なんだ?
 あ、しまった、ここで鴨下のバカ理論を開陳するつもりではなかったのだ。
 ところで、ネット上の国会議事録サイトで検索をかけるとこの日のこの予算委員会の議事録が掲載されていないのはどうしたことだろうか。衆議院テレビではライブラリーにその記録は残っているにもかかわらず。
 3号被保険者制度が創設されたのは1985年の制度改正からである。1985年というとどういう時期であったのかというと9月にプラザ合意があって円がドルに対して急速に高くなることになって、円高不況に突入した。わたしが働いていた企業では、青息吐息になってわたしが異動になった先の営業部では見通しが立たなくなって、全員で新しい事業を捜すことになった。製鉄会社が鰻の養殖なんてことを始めたのがこの頃のことだ。金利はどんどん低迷していくことになった。すると数年後にはこの低金利だからと不動産に投資する動きが盛んになった。すると今度はあれよあれよといううちにバブル経済と後にいわれた浮かれた経済状況になっていった。資金がなければ、リゾート法なんてものができたりして世の中全体がどんどん浮き足立ってきた。金なんてものはどこからでもどうにかなるんだという風潮が世の中の主流だった。かくいう私も浮き足立っていた。新入社員にこの会社に入ったからといって自分がやるのはこの分野だと決めつけないでなんにでも手を出せ、なんでも受け入れろと煽った。
 当時議論になっていたことのひとつが主婦労働という概念があるのか、ないのかという点であった。サラリーマンが働く上でこれを支えている主婦の日頃の家事作業は労働ではないのかという発想からこの制度ができた。ところがこれからどんどん女性の社会進出が当たり前になっていく。
 そして年金制度が経過するにしたがって、現在のシステムで年金受給資格を得る年齢に到達する人たちが増える。つまり、1号被保険者が退職する。この瞬間に3号被保険者はその資格を失い、国民年金に移行し、保険料の支払い義務が生じる。この時に移行措置手続きをしなかった人たちが生じてしまった。その数、なんと97万人といわれる。その未納分を「2年分だけ支払えば」納入してきた人たちと同等と見なす、という裁定が物議の元だ。なんで「2年間しか払えない」のかといったら、通常の年金未納者の扱いと同じにしたからだ。
 私にいわせるとここがまず違っている。払いたいだけ払わせれば良かったのだ。通常の未納者も同じ。「あ、払ってなかったンだったぁ〜!」と思った人にはいくらでも払いたければ払って貰う。いくらでも払ってくださいよ。どうしても払うことができなかった、そして今でも払えないという人に対しては残念ながら年金は給付されない。それでは暮らせない、という人に対しては社会保障で賄うしかない。
 それでは、「払えない!」といって払わないで来て、最後の最後に「もう暮らせない!」といって生活保護受給する輩が続出するだろうという見解は間違ってはいないのだけれど、実は数字で見たら非常に限定的になる筈だ。
 なぜなら人間は自立を希求するという生物だからだ。将来を憂える生き物だからだ。
 ところが片や、既に救済されてしまった人たちがいる。払っていなかったのに、払ったことにして貰っちゃって、今や年金を人並みに貰っちゃっている人だ。これに費やされた金額は一体いくらなんだろうか。大変に申し訳ないけれど、この時点では支払いはストップするしかない。そしてこれまで支払われた分についての返却は要求しない。
 これでは不公平じゃないかという声が依然としてあるだろう。それではその批判する人たちは、霞ヶ関が、特に厚生省や郵政省がグリーンピアだなんだと、預金者や国民の保険料をどんどん箱物に費やして、まさに無駄遣いをしてきた時に、彼等からその損失分を取り返せと主張してきたのかということでもある。この点をまさに自民党、そして「ふざけるな」の鴨下一郎に明確に答弁して貰いたい。