そうですかぁ、母親に溺愛されて育った子どもは弱いものいじめに走りそうだといいますねぇ。ということは私も弱いものいじめには知りそうですかねぇ、ってこの歳になってわからんのはどうもなりませんかねぇ。
というのは、私は姉二人の末っ子のひとり息子でしたから、母親には溺愛されておったはずなんですがねぇ。気持ち悪いですねぇ、自分でこういうのは。
私の身長が中学一年の歳に一気に10cm伸びたのを最後にまったく伸びなくなって、高校時代に、前から数えた方が早い状態だった時に、わがおふくろは「済まないねぇ、私がちびだからお前の背が伸びない」と嘆いておりました。ま、私はそれほど気にしていなかったので、なんちゅうこともなかったのですが、今になってみると、なるほど、オヤジは私より大きかったのだから、あの母親のせいだったとわかります。
そのオヤジは仕事が忙しかったようで、うちでは女三人に囲まれて育ちましたから女々しい男となったのではないでしょうか。いやいや、これはまずい、女々しいなんて言葉は今頃使ったら大騒ぎになってしまいます。上野千鶴子あたりに聞かれたら、ぼこぼこにされますね。
なにしろ小学校に上がる前なんぞ、靴下の踵に積み木を入れられてハイヒールごっこをやらされておりました。
この歳になって、「やれやれ」とか、「あいたた」とか口をつく言葉がハッと気がつくとおふくろそっくりになっておりますな。まるで爺さんではなくて、婆さんです。そういえばうちの親父はそういう言葉をほとんど言いませんでしたね。というか、爺さんになってうちに常時いるようになってからは一緒に暮らしていなかったからでしょうか。その親父が死んでから一人で暮らしていたおふくろの口癖がうつったんですかねぇ。
そのおふくろが動けなくなってから、長女はおふくろに冷たく当たり出していましたねぇ。あれは一体何だったんですかねぇ。オヤジが死んでから長女は変わってしまいましたが、あれはオヤジに対する思いが強すぎた、ということですかねぇ。わからないまんまです。
