ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

居住者

 うちの集合住宅はワンフロアーに8所帯が入っている。18年前に新築した時にはそのうちの6軒は全て誰が入っているのか、わかっていた。しかし不思議なことに1号室と2号室は一体誰が暮らしているのか、わからなかった。そのうちに残りの6軒のうち半分の3軒は既に二代目の居住者になっている。ところが誰が暮らしているのかわからない1号室と2号室はその後も居住者が入れ替わって、今じゃ何代目なのかわからないくらいだ。

 エレベーターを待っていたら、その1号室の扉のカギが「ガチャ」ッと音がして開き、中から中学生か、高校生とおぼしき女子が出てきた。多分初めて見た人だ。「こんにちわ」と声をかけると、小さな声で反応が返ってきたけれど、目は伏せたままだった。エレベーターが来たから「どうぞ」といって前を開けた。彼女はそのまま乗った。私もあとから乗って、閉まる扉にむかって立った。どうしようかと逡巡したけれど、振り向いて「私は一番奥に住んでいます」と自己紹介した。すると「あ、そうなんですね?」といった。私はいつ引っ越してきました、よろしくお願いします」的な反応を期待してしまっていたけれど、彼女のこの反応はどういうことかわからなかった。だって「あぁ、そうなんですね?」っていうのは「あぁ、そうなんですか」とは違うじゃないか。ところがどうも今の若い人たちのこの「そうなんですね?」というのは「そうなんですか、それは知りませんでした」と同じ意味らしいのだ。

 「以上でよろしかったでしょうか?」というウェイトレスの人の言い方に似ていないこともない。「これでよろしいですか?」という意味なんだけれど、この言葉のつなげ方を産み出したマニュアル制作者を引きずり出して、こっぴどく批判してやりたくなる。と、同様に「そうなんですね?」という疑問文を作り出した奴を非難したい。こっちが「こうなんだ」といっているんだからことさらそれに疑問を挟むなよ、信じてねぇのか!といいたくなる。

 この集合住宅も112戸全部で暮らしているんだけれど、住民が若返れば若返るほど、相互コミュニケーションはなくなっていく。そのうち、建物の中ですれ違っても、目もあわさず、声も掛け合わず、知らん顔で通り過ぎることになるだろう。災害が起きた時が心配だ。