ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

 とうとうおふくろが危ない、という。病院にも行かずに、他には誰ももういないおふくろの実家で、姉とふたりでおふくろの最後を迎えた。夜も遅くなって、最後の息を引き取ってから、枕元にお線香を上げて、「僕は布団をこの部屋に運んで一晩一緒に寝るよ」といったら、姉もそうするというんだ。ところがしばらく経ってから、やっぱり向こうの部屋へ移そう、ということになって、姉が上半身を、そしてわたしが下半身を抱えて、もち上げた。数歩歩いたら、姉がちょっと手を滑らせて、畳の上に、おふくろの上半身が、どんと傾いて落ちた。すると、死んだはずのおふくろがゆっくりと目を開けた。その表情は、ぼけてしまったときの顔ではなくて、ハッキリと平常の時の顔になっていた。「あ!お母さん、生きていた!あぁ、生きていた!良かった、良かった!」と姉と半べそになりながら叫びあっている声で、目が覚めた。泣けた。