ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

CBSドキュメント(TBS)

 ピーター・バラカン吉川美代子が出てくるドキュメント番組。今朝の番組の中で最もショックを受けたのはNFLのライン・バッカーだったBill Romanowski の話。これは2005年10月16日に米国で放映された60 minutesの編集放送である。
 Bill Romanowski は愛称「Romo」と呼ばれていたプレイヤーで、サンフランシスコから始まってフィラデルフィアデンバーオークランドで合計243試合に出場。スーパー・ボウル5試合に先発しており、そのうち4試合に勝っているというラインバッカー中のラインバッカーである。
 のっけからびっくりするのは、彼は一試合が終わると翌週の試合に備えて相手チームのプレイヤーだけでなく、その周囲の人間まで憎しみ続けるのだということである。だから試合が来たらこのままではどうなるか分からないというほどに自分の気持ちが高まっているというのである。だから試合中もとんでもないことまでしてしまうので、ペナルティーの金額も相当なものである。
 何しろタックルの人の山の中で、相手プレイヤーの目の前にあった指を折ったとまでいうのである。
 四六時中筋トレに励むだけではなくて、サプリメントを摂取するために一日に100錠ほどを飲んでいたというし、ほぼすべてといって良いほどのステロイドを試したという。NFLの検査に引っかからずに効果のあるものを探し続けたという。米国の他のプロスポーツ選手の何人かの話で知られた会社のものも摂取したことがあるという。
 こういう話をしながらの彼の表情がアップになっている間に気がつくのは、瞬きが極端に少ないということや、眼に表情がないということである。
 なぜそんなに四六時中自分を追いつめるようなことをするのかという質問に対して彼は「失敗することが怖かった」という。そんな時が来たら何が起こるか分からないから、とにかく無我夢中で全速力で駆けている、という感じである。2003年8月24日、シーズン前の練習中にチームメイトのMarcus Williamsを殴り引退に追い込む。結果として34万ドルの賠償金を支払う。
 それまで激しいタックルのあとの脳震盪は何度も経験したが、とうとう最後にどうにもならない脳震盪を起こし、引退する。彼はそこで止まることになってしまった自分のプロ・フットボール・プレイヤーとしての人生を未だに受容できないという。だからロッカーすら片づけられないのだといって涙を流した。
 彼に今必要なのは番組に出ている場合じゃない、そしてMy Life on the Edgeという本を書いている場合じゃない。精神的な支えを必要としている。