COVID-19が騒ぎになるまで、月に一度は必ず顔を出していたBARがあって、そこのマスターは行くと必ずチェッと・ベーカーをかけていた。必ず。チェット・ベイカーといえば唄う。なにしろ「Chet Baker Sings」なんてアルバムが出ているくらいだ。実は私はそれほど好きじゃない。なにしろいつの間にか、彼のアルバムを聴いていて、どこで、どんな時にこれに気がついたのかわからんのだけれど、ずっとこれは女性の歌手が歌っているんだと思っていた。1950年代、60年代前半あたりはこんな歌い方をする女性歌手が結構いたような気がする。ところがあとで、「バカ、これは男だよ、それもパツラじゃないか」といわれて驚いた。巧いよなぁ、ご愛敬でクラブで唄ったらかなり受けたかもな、と思いながら、好きになれなかった。あのアルバムはフロントの音、つまり、彼の声、ラッパの音にリバーブをほとんど全てオフにしているのが、ある種独特の雰囲気を作っているのかも知れない。とすると、ディレクターの腕か、それとも彼の感性か。
その上、「BORN TO BE BLUE 」なんて自伝映画を観ちゃって、余計辛くなっちゃってねぇ。
それにしても、どうして彼があのチェット・ベーカーが好きなんだろう。彼にも挫折の日々があったんだろうか。
- アーティスト:Baker, Chet
- 発売日: 2013/07/30
- メディア: CD