ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

猛暑

 暑いといっていたら何回いっても終わらないというくらいの暑い日になっちまいました。年に一度の「鰻で落語」の会です。おでましは十一代目・金原亭馬生。前座は末弟子の駒六。六番目の弟子なので駒六。明治大出身だそうですが、落研じゃないといっています。じゃ、何をしていたの?と聞いたら普通の学生でしたって。本当に近頃の子はみんな様子も良いし、「手紙無筆」も難なくこなすし、末恐ろしいです。
 どうも馬生さんの教育方針はとにかく大きな声を出せってことなんじゃないかと、四番目、五番目の弟子を見ていると思えます。みんな声は大きくて、さぁ、芸人はこっからだ、という気分にさせます。上ふたりの弟子は既に真打ち昇進。三番目と四番目は二つ目という具合に一門、順風満帆でございますが、師匠の芸風通りのタイプで、はちゃめちゃなのはいませんが、玄人好みに育ちそうでございます。
 ところが不思議なことに、通り一遍の落語好きの方ですと、先代の馬生、つまり志ん生の長男、志ん朝の兄貴、池波志乃の親父、の芸がおわかりでないのかもしれません。馬生さんの芸はじっくりという言葉があいそうな噺で、言葉の端々の「間」だとか、雰囲気がおわかりいただけないと、なんだか、ごちょごちょいってんだよな、ということになってしまうのかもしれません。ま、早い話が「ガハハ!」と笑えれば良いんだと思っている方にはちょいと縁のない芸風なのかもわからない。
 同様で、先代の林家正蔵(のちの彦六)や、そのお弟子さんの正雀さんの芸もそんなでございます。だから、面白くない、あんまり上手いと思わない、という人は普通にいます。それはその人の好みでございますから、致し方のないことでございます。
 先代の馬生といえば「与話情浮名横櫛」を興味深く聞きましたねぇ。あの話が本当はえらく長いんだと知ったのも先代の馬生さんの演目でした。なにしろ「雲の上団五郎一座」の八波むとしと三木のり平の絡みの玄冶店の場面しか記憶にありませんから、しょうがない。なんで与三郎が木更津に来たのかも知らないし、なんでお冨と与三郎がどこでなんのつながりがあったのかも知らないで、「久しぶりだなぁ〜」なんて真似していたわけですからね。
 この噺は延々と、暗い場面の連続ですからね、笑いたい方にとっては「落語ってこんな?」といいそうですものねぇ。
 そういえば今日の馬生さんの演目は「宿屋の富」でございましたけれど、時間たっぷりでございますから、宿屋の女将さんもちゃんと登場して、面白うございました。
 短い時間でわっと笑いたい方々は寄席にどうぞお越しください。長くてもひとり20分ほどでグワッ!と笑いで心をなだめてくれる芸人が次から次でございます。じっくり聞きたい方は国立演芸場の定席や、名人会、TBSがやっている「落語研究会」といったなかなか満員で入り込めない会、それともそれぞれの落語会に潜り込むという手段でございます。
 勿論年に一度の「おうな」も堪能させていただきました。