ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

分散睡眠

 年寄りになると(誰に文句をいおうと、75歳は立派な年寄だろう)体力が衰えるので、いっぺんに睡眠を取ることができないという、本当かどうか知らないけれど。たしかに私は明け方から大体4時間ほど。そして散歩(徘徊ともいう)から帰って昼飯を食べてから3時間ほど寝るのが普通になっている。ところが家人は日付の変わる頃に寝て、8時間ほど眠り、昼飯を食ってから小一時間寝るという睡眠をとっている。つまり敵はこっちを遥かに超える体力を維持している、ということになる。見ていると、主睡眠なんぞは「あらあら、こんな時間」とかいって、下手をすると9時間くらいの長時間睡眠をこなしたりしている。どう贔屓目に見ても、長生きしそうで、勝てそうもない。
 はっきりいって、毎回布団に「やれやれ」といいながら潜り込むたびに、もうこれで目が覚めないのではないかという気がしないでもない。タレントの何とかが、作家の何とかが、やれ74歳で、とか、75歳でとか死んだという知らせが黙っていても、SNSやネットニュースで流れてくるからそういう気になっても何ら不思議はないということだろう。昨日もあき竹城が75歳で死んだと聞いたよ。あのおばさん、昔は日劇ミュージックホールのダンサーだった、つまりストリップのお姉さんだったという話を私たちの年代は知っているけれど、多分テレビで見ていた人は知らないんだろうなと、余計なことを考える。そういえば、日劇ミュージックホールには一度だけ上がったことがある。上がったことがあるといういい方は、なんだか吉原の遊郭みたいで変だけれど、あのまあるい建物の上の方にあったので、本当に「あがる」のである。なんでそんなところに行ったことがあるのかというと、あそこも東宝の経営で、あの会社の演劇系の人間と飲み屋で友だちになったことがあって、彼らが呼んでくれたのである。そいえば、当時は東宝の映画はあんまりお金を出した記憶がない。そんな会社の人間と知り合いになると、その業界の人とも知り合いになるようなことがあって、横浜の石川町のバーのオーナーがもとはといえば東映の映画宣伝部の出身で彼らとも知り合いだったと知ってその偶然に驚いたこともあった。
 現役を引退してからというもの、それでなくても人との付き合いの範囲がどんどん狭くなるのはともかく、この3年間のCOVID-19によるほとんどの行動停止によって、ひと付き合いは、絶無となった。音楽関係は全てやめた。練習するだけで飛沫を飛ばし続けるようなものだからだ。ましてやライブなんて、とんでもない話で、まさに口角泡を飛ばすんだから、危ないっちゃありゃしない。飲み屋での友達とも、それっきりだからもう三年間、逢っていないなんてザラだ。こうなると、年初の賀状は一体何通やり取りすることになるのか、想像もつかない。

 そういえば、その代わりに何をしているのかといえば、やっぱり本を抱え込んでいて、気がついたらひょろひょろと歩き出し、また気がついたら、ゴロゴロと寝ているのである。

 星野博美の「世界は五反田から始まった」が面白くて、とうとう、例の大宅壮一賞をとったという「転がる香港に苔は生えない」の文庫を教文館の本棚で見つけ、買おうと手にして平棚へ行くとみすずの「蛇と梯子――イギリスの社会的流動性神話」が面白そうだった。ところがこの分厚いやつがなんと6000円もして、どうせ買うならMARUZENでポイントか、ってんで歩いた。その間に、諦める気になるかもしれないからと。到着してみると、案の定、やっぱり一冊の本に6000円を払うような身分じゃないな、と思い直したが、その代わりに星野博美は「香港」と一緒にあった「みんな彗星を見ていた」も買ってしまった。この本の最初のところを見ると、どうやら彼女が立教女学院の中・高出身だというのは本当のようだ。
 ユーラシア旅行社がネットで配信した「フランダース絵画」の(この回だけ無料な)第一回でベルギーの現地ガイドで(わが家では超有名な)藁谷さんが出てきて解説してくれた翌日だったことが私を浮かれさせていたのかもしれないが、星野博美の文章は、取り付きやすいのである。藁谷さんという人は確かもとはといえばコントラバス奏者だったのではなかったか。彼はカトリックをあからさまに否定していたっけ。金で信仰を買ったようなものだと。もちろん免罪符を売ったなんてのは、まさにそのまま統一教会の壺のようなものだものね。
 そういえば昨日そのフランダース絵画の話をしていた傍で、わが家の「ふふふ、そんな事は知っているワイ」娘が突然、「キリスト教徒はマリアの処女懐胎をそのまま信じているのか」というのである。そういいながら「もっともお釈迦様が脇の下から生まれるってのも変だが」といった。つまり、バカバカしいことを信じるのが宗教なのか、というのである。そりゃそういうことだといっているんだから、それはそうなんだなと受け止めるものなんだよな、と答えたけれど、明らかにわが家で唯一人キリスト教徒を標榜してる私を非難しているのである。うちでは懸命な人は宗教なんかには染まらないというのが正義なのである。
 そういえば(どういうのか)、JR東海ツアーズの新幹線利用パックは健在で、四条の狭いホテル6泊7日パックがひとり5万円弱で売られているのを発見した。COVID-19でなければ出かけるところだけれど、そうでなければ、外国人観光客でごった返していることだろう。