例の吉田某の虚偽証言白状事件以来、歴史修正主義者の勢いはアベシンゾー軍国主義者の勢いに乗じて遙かに勢いを増し、今や朝鮮半島からの内地への労働者の移動はすべて個々人の自然な発想によるものであり、あまつさえ女子挺身隊は皇国の臣民としてのやむにやまれぬ発想から起こったものであるといわんばかりの解説を附して公開されるものが目立つようになってきた。
彼らのほとんどは一次資料に当たることもなく、修正主義的媒体や個人の煽りによってのみえられる資料を都合良く解釈するに過ぎず、ごくごく簡単に理解しているに過ぎない。しかしながら、往々にして世の中の風潮というものはそうして作り出されるものであり、関東大震災の朝鮮人虐殺事件についてすら、それだけの流言飛語を飛ばされるだけの日頃の下地があったことが原因のひとつだといわんばかりの解説すら存在する。そして、それはこれまで歴史上で持たざるをえなかった胸のつかえをすっかり降ろさせてくれるものであって、これほど気持ちの良いものはないという風潮が根底にある。
その傳からいって、この風潮はすでに彼らの思惑通り、昭和初頭の雰囲気に突進している。遅くないうちに、致命的な事件が起きるはずである。ただ、当時と違うのは周囲の力関係だろう。
