私は福島が復興するというのはあの無茶苦茶になってしまった原子力発電所が無害な状態になり、昔から暮らして来た人たちがなんの憂いも、不安もなく、楽しい家庭生活をまた取り戻すことができるようになることだと思っていた。だから、もはやそう簡単にやってくるわけがないと思っていたので、あの事件直後に農業従事者は、休耕田にした水田を譲ってあげてそこでもう一回農業をやり直すことにし、漁業従事者は後継者難で困っている漁業協同組合へ転身して行くということではどうでしょうか、と言っていたくらいだ。もちろん世の中は転校なんかじゃないんだからそう簡単に行くわけはないし、できかねることは多いだろうけれど、いくら帰りたくたってどうしようもない場合にはどうにかならないものだろうか、と思う。
しかし、いまの政府の対応を見ていると、もういいから戻れよ、少しくらい放射能で危なくたって、住民がその気になるんだったら、そういうことにして賠償にかかる費用をもうこの辺にしておけばいいよ、という実に不遜な動機から発想されているとしか思えない。
