戦争に負けて終わったとき、今上天皇は12歳だった。日光に疎開していた。教育係に昭和天皇がマッカーサーに依頼したといわれている米国人は結局クェーカー教徒のヴァイニング夫人に白羽の矢が立ったわけだけれど、彼女は最後に選ばれたふたりの候補のひとりで、もうひとりは誰かといったらハワイ生まれの日本のことを良く知る人だったそうだけれど、結局昭和天皇はヴァイニング夫人を選んだそうだ。
彼女は学習院で英語も教えたが、生徒達にアメリカ風なファーストネームをそれぞれに名乗るようにいったけれど、中には「なんで私がジェームスなんだ!」と抗った生徒もいたという。ま、そりゃそうだろう、ついこの前まで彼らはいわゆる「少国民」だったわけで、そんなことに馴染むわけはない、と保阪正康は指摘する。
それって私たちの頃だって、そんなことをいわれた記憶が何回かあって、その度に違和感はあったよ。朝から卵かけご飯をかっ込んでいるJamesなんているわけないじゃないかって。
ヴァイニング夫人は米国から何冊かの副読本を取り寄せ、それを教室で使ったんだそうだ。保阪正康はそんな副読本をあとから入手したことがあるのだそうだ。それがどんな本だったのか、知ってみたい。そして、その副読本の話をだすと、今上天皇のご学友は、おしなべて、懐かしいなぁ、覚えたもんです、という反応を示すが、今上天皇はその手の話を振っても、ほとんどスルーなんだそうだ。つまり、良い感想を持っていないのではないかと保阪はいう。あの人は関心のないことに対しては、良く知る人にはわかる反応があるのだそうだ。
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