ほぼ足りてまだ欲 その先

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傲慢

 大坂なおみがセレナ・ウィリアムスを6-2 6-4のストレートで破って、20歳にして初のグランドスラム優勝を果たした。今年になってからの大坂なおみの成長は驚くほどのもので、あれよ、あれよという間の出来事だった。以前は、すぐにキレちゃう、ショート・テンパー娘だったのが、明らかに自分で自分をコントロールしようとするのが見えている。ミスをしたときにしかめた顔を、以前だったらそこから投げやりな雰囲気に移行していたのに、自ら笑顔を作り直していこうというのが手に取るようにわかる。諦めない、粘りがある。
 この試合は実に後味が悪いものになってしまった。それはセレナ・ウィリアムスの責任だといって良いかもしれない。そもそも、彼女はコイントスの段階から、立ち会いの子どもがそばにいるというのに、ポルトガル人の主審が説明しているにもかかわらず、オーバー・スウィングを繰り返して、まるで「なんでこの私が殊勝なリスナーでいなくてはならないんだ!といわんばかりで、見ていた私は、なんだ、こいつは、まだ傲慢さが治っちゃいないんだなぁでした。
 そして、1stセットを落として2ndセットの第一ゲームを取った時にコーチのムラトグローが、前に詰めろ、あるいはボディーを狙えともとれる合図をした(後半は解説をしていた伊達公子の言葉)。それを主審が警告した。これが第一回目のwarningだった。ムラトグローは試合後「席からコーチングした」と認めたが「だけどセリーナは見てないよ、大坂のコーチだってやってる、というか、どのコーチでもみんなやってるよ」と言い訳をした。ちなみに女子テニス協会(WTA)ツアーの試合ではコーチングは認められているが、四大大会では違反行為に当たるということになっている。その辺をムラトグローは誤解していたのかも知れない。私が見ている限りでは、大坂なおみのコーチであるサーシャ・バインは常に冷静で、拍手をするか、腕を組んで目を見張っていた。
 大坂なおみを今年最初からコーチしているサーシャ・バインは、以前はSerenaの練習相手を8年間も務めていた(日本のテレビでは、彼をコーチといっている局があったけれど、それは間違いで、彼は練習相手)。かつて日本のテレビでSerenaのドキュメントが流されたときに、練習相手のサーシャ・バインに対して強い口調で、練習についての文句を言っているのが映ったことがある。サーシャ・バインの方がSerenaより3歳若い。
 そして第2セットの第5ゲームでミスを犯してこのゲームを失うと、Serenaは思いっきりラケットをコートにたたきつけて、これを割った。smashingと表現されている。この行為に対して主審は二回目のwarningをし、大坂なおみサービスゲームである第6ゲームは15-0から始まることになった。
 ここからSerenaは大抗議を始める。Serenaは口汚く主審をなじり始める。最初は「私はズルをしてまで勝とうとは思わない、そんなんだったら負ける!」「そんなことをしたら子どもに示しがつかない!」だったのが「謝れ!お前は嘘つきだ!」になってしまい、とうとう三回目の警告となって、大坂なおみにワンゲーム加算されることになる。従って、2ndセットは6-4で大坂なおみの勝ちとなったのだけれど、実際には9ゲームしかプレイをしていない。
 こうなると、Serenaは完全に常軌を逸してしまい、駆けつけたディレクターにも大声でまくし立て、最後は泣き出した。これではこれまでに20数回グランドスラムで優勝したプレイヤーとは思えない。
 豪州の新聞The Sydney Morning HeraldがFB上で行ったアンケートでは69%が主審の判断はフェアだったと答えている。
 一番の被害者は多分大坂なおみだろう。折角の初めてのグランドスラムのタイトルがおかげですっきりしないものになってしまった。彼女が表彰式で終始浮かぬ顔だったのがその証拠だろう。憧れの大選手だったSerena Willamsが怒鳴りまくって、荒れに荒れたプレイを目の当たりにしてしまったのだから。
 ちなみに大坂なおみは日本生まれだけれど、幼いときにニューヨークへ渡り、8歳からずっとフロリダで育った。お母さんが日本人で、お父さんはハイチ生まれの米国人。13年間日本に暮らしていた。大坂なおみ二重国籍だけれど、テニスでは日本国籍を選択している。だいぶん日本語は巧くなってきた。母親は終始大坂なおみの試合を観戦していたけれど、父親は(なおみの言を借りれば)見ているのが怖いので来ないのだそうだ。
 追記:Serenaが女性に対する差別である、男性プレイヤーだったらあの程度の抗議でwarning三回のpenaltyは課せられないはずだと主張し、またそれを支持する解釈も見られている。しかし、四大タイトルとその他のATPトーナメントとはルール上も一線を画しているということを忘れてはいけない。例えばかつてジョン・マッケンローなどは多くの人の記憶に残っていると思うが、必ずといって良いほど、文句をつけ、レフェリーに無茶苦茶をいっていたが、あの当時とは違って今はチャレンジもあるし、精度は上がっている。今回の場合、Serenaのコーチ自身がやったけど、みんなもやっているじゃないか、とうそぶいていたが、場が違っていることを彼も認識していない。ジョン・マッケンローだって、罰金を食らったりしていたはずだ。
 2万人以上入る観客がとにかくSerenaのカムバック優勝を見たがっていたし、屋根が閉じられて音が響く状態になっていたこともSerenaをある意味後押ししてしまったともいえるのではないのか。
 追追記:Serena Williamsへの罰金は17,000ドルらしい。