ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

The Ventures

 先日、The Venturesの創設メンバー二人のうちのひとり、Donald Lee "Don" Wilsonが88歳で他界したと報じられた。われわれ年代の爺さん達のかなりは感慨にふけったのではないだろうか。これで私が知っている最古のメンバー、4人は全員他界した。

 かれらが日本に初めて来た時のメンバーはドラムのMel Taylorが加わった四人で、このメンバーになったのは1962年だという。私はまだ中学3年生で、日本にはエレキという言葉もなかったし、フェンダーのソリッドのエレキ・ギターを見たこともなかった。それまではピックアップギターといって、わかりやすく云えば、かしまし娘が持っていたギターにマイクがついたものと云えば良いだろうか。玉川カルテットのギターだ。
 中学生の時はそういう方面には全く興味がなかった。性根を入れて英語を勉強しだした頃だし、土曜日の午後は校庭でみんなでフォーク・ダンスに興じていた。この年の5月にオリジナル・メンバーであるドン・ウィルソンとボブ・ボーグルの二人が日本に来たことがあるそうだけれど、私は全く知らなかった。
 彼等が次に日本にやってきたのは1965年1月で、The Astronautsとカップリングだったそうだ。私が初めて見たのは前座がThe SpidersとSwing Westだった。The Astronautsも出たのかどうか記憶にない。場所は大田体育館。司会が英語も日本語も喋るフィリピン人だった。前座の二つのバンドはほとんどの聴衆には知られておらず(何だこいつら、素人じゃねぇか)と思ったもんだけれど、今から考えてみたら、おまえだってよっぽどの素人だが、The Spidersはもう何度もACBで見ていた。
 The Venturesの演奏が始まると、魅入られてしまったことが昨日のことのようだ、と書くけれど、もう記憶は曖昧だ。とにかくメル・テイラーのドラムの激しさに驚いた。なにしろアンプを通して増幅されてくるエレキの音に負けないんだから。

 この年私は高校三年生で、もう既に数学は諦めており、私立文系三科目受験組みとなっていて、The Prodigal Sonsというエレキバンドを組んでおり、落語研究会の創設メンバーでもあった。銀座のACBには足を踏み入れており、学校では生活指導の岸野という体育教師と敵対関係にあった。とにかくThe Venturesの歯切れの良いリズムと圧倒的な音圧に魅入られていたのだ。当時は既にThe Beatles旋風も上陸しているわけだし、日本のGSもどんどん新しいバンドが飛び出してくるわけで、忙しいことこの上なかった。その上、VANのブランドに洗脳されてMEN'S CLUBを聖書と崇めていた。
 家では不良扱いされており、ドラムを買いたいといったら親父にビンタを食らってそれから親父と口を利かない数年を過ごすことになった。つまり、The Venturesが日本に来なかったら、わが家はもっと平穏な家庭だったかも知れないわけで、そのオリジナルメンバーが全員他界してしまったというこの年に気がつくと、私たちは後期高齢者に差し掛かっていることに驚愕する。もう時代は終わっているのだろう。