
もうあれから52年である。あの頃は年々ベースアップがあって全く金なんてなかったけれど、黙ってあの職場で働いていさえすれば、きっとどうにかなるってわけだった。実際、結婚したときには本当にほぼ金がなかった。だから、年末ボーナスと12月給料日の直前に結婚した。そうすればとりあえず食いっぱぐれることはないだろうという読みである。住居費も社宅だったから格安だし、通勤も作業服のまま徒歩およそ15分だったから、職場と社宅を往復するだけならほとんど金もかからなかった。
電子レンジも冷蔵庫もテレビも最新型が搬入されたわけだから、それまで暮らしていた独身寮生活から見たら、突然ハイレベルの二人暮らしになった。あの頃は本当に順風満帆だった。そこからどんな事が起きるのかなんて思っても見なかったものだ。仕事も今から考えると嘘のように忙しくって、まさに生産工場そのものの躍動感の中に日々暮らしていたからまさかその後の有為転変が待っているとは思っても見なかった。
二人でスーパーの二割引鮨でお祝いをした、感謝である。
